その瞳に映るのは?(4/5)
気付いた時には、ちとせを後ろから抱きしめていた。
初めて触れたちとせの体温に、俺の鼓動がどんどん早くなる。
「り、龍‥‥」
「ちとせ……。俺は、自分を抑える事がメンバーの、トロイメライのためだと思ってきた。……でも、ちとせはそんな俺を叱るのか?」
俺の腕の中で、ちとせが身じろいだ。
顔を背ける様にした彼女の首筋に、顔を埋める。
「ちとせ、俺はずっとお前を見てきた。でも、この想いは許されないとも思ってた。だけど………もう限界なんだ」
この手を離したくない。
力を込めた俺の手に、ちとせの手が触れた。
「………離さなくて、いいよ。私だってずっと龍の事、見てたんだから」
耳を真っ赤にしたちとせが言う。
その声は、もう震えてはいなかった。
たまらない。
俺は、ちとせの柔らかい髪をかきあげてその白い首筋にくちづけた。
「んん……龍…」
「ちとせ、好きだよ」
俺は、ちとせの赤い唇を指先でそっとなぞった。
「残念だけど、こっちはオアズケだな」
「え………?」
真っ赤なちとせの顔を覗き込んで、口の端をあげる。
「俺はさっきタバコを吸ったばかりだからな。レコーディング中に、ボーカルの喉を傷める訳にいかないだろう?」
その分も、後でじっくり味あわせてもらうよ。
ありったけの熱を込めて、ちとせの耳にそっとささやいた−。
→あとがき
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