Musician | ナノ


Ryu's Happy Birthday!『愛し方しか知らない』(4/5)

龍が突然私の腕を掴んで引き寄せたので、私はソファの背もたれに斜めに寄り掛かっていた龍に馬乗りする格好になる。



「ちょ、ちょっと龍! 何す‥‥‥‥」




  *illstlation:白夜*



私が慌てて体を起こすと、龍の顔が思いのほか近くにあって。



「あ‥‥‥」


龍の目は、さっきまでの意地悪なそれとは打って変わってものすごく熱くて‥‥‥私は金縛りにあったみたいに動けなくなってしまった。



そのまましばらく見つめ合っていると、龍がゆっくりと話し出す。



「疲れてるよ‥‥だけどどれだけ休んでも、ちとせが足りなくて全然疲れがとれないんだ‥‥」



それに、こんな態勢でおとなしく寝られると思うか?



龍の言葉は最後の方は甘くかすれて、私を見つめる目もさらに熱くなっていて‥‥‥。



「こんな態勢って、だってこれは龍が‥‥‥んんっ!」


反論しかけた私の後頭部に手をやって、私の体ごと引き寄せた龍の唇が私のそれをふさぐ。



「ん‥‥は、ぁ‥‥‥っ」



「‥‥そんな可愛い声で鳴かれると、俺も手加減なんかしてやれないぞ?」


「そんな事っ‥‥んんっ」


キスはどんどん深くなって、気づけば龍が体を起こして私がソファに押し倒される形になっていた。



(龍‥‥)


「‥‥ちとせ」


わずかに唇を離して、龍が私の名前を呼ぶ。


「‥‥っ」


その吐息にまで反応してしまったのが恥ずかしくて目線を逸らすと、龍の指が私のアゴに添えられて上向かされた。


「ちとせ、ずっと俺だけを見てろよ」


「ぁ‥‥んん‥‥りゅ、う‥‥」


目を潤ませて肩で息をつく私を、龍はすぐ間近で見つめている。


その瞳の奥には、隠す事なんて出来ないくらいに熱い感情が揺らめいていた。



「‥‥‥‥」


そして、私の呼吸が落ち着いてきた頃、耳元に口を寄せてそっとささやく。




「‥‥どうする? 部屋に行くか、それとも‥‥?」



「〜〜〜!」


もうまともに答える事なんか出来なくて。



真っ赤になった私は目を伏せて、龍の首にギュッと抱き着いた。





‥‥‥龍が、声を立てずに笑う気配がした。





久方ぶりの恋人達の逢瀬はひそやかに、ただ静かに秋の夜に溶けていく―――。






→あとがき

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