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いっしょに帰ろう?(4/5)



〜瑠禾Story〜


開いたドアの向こうに立っていたのは瑠禾だった。



ステージでのテンションはすっかりクールダウンした様で、いつも通りの無表情で小さく首を傾げながら私を見る。



「ちとせ、もう支度は終わったの?」



「あ、うん。大体は……」



何気なく答えると、瑠禾は私の右手をガシッと掴んで引っ張り始めた。



「良かった。じゃあ早く行こう?」



そして本当にそのまま歩き出そうとする。



瑠禾らしいと言えばらしいけれど、あまりに唐突な展開に私は慌てて口を開いた。



「瑠禾!……ちょっと待って。……帰るんだったら、バックと上着取ってくるから



「……忘れてた」



「……………」



本気で言っているらしい瑠禾をその場に残して、私は走って控え室に戻った。



上着を羽織りながら、少し考えてみたけれど。



(うーん。私、瑠禾と今日の約束なんて何もしてなかったよね……?)



じゃあ、また突然の思いつき?



(…まあ、瑠禾と一緒にいられるなら何でもいいや)



最後に鏡を覗いて笑顔を作ると、私は瑠禾の元へと急いだ。






「……瑠禾。このお店って……」



瑠禾の運転する車に乗って、テレビ局から30分ほど走った所にあるイタリアンレストラン。



どうやらここが瑠禾のお目当ての場所のようだった。



けれど、このお店は。



私は、お店のオシャレな外観を見上げたまま固まってしまった。



「ちとせ、行ってみたいって言ってたでしょ?」



……覚えては、いる。



先月辺りだったか、スタジオ練習の休憩時間に見ていた雑誌にこのお店が載っていたのだ。



メインのイタリア料理はもちろん、手の込んだデザートが若い女性を中心に大人気となっていて。



いわゆる『予約の取れないお店』として、評判だとその雑誌にはあった。



それなのに。



「瑠禾。今日って3月3日のひな祭りだよ。バレンタインやホワイトデーほどではないだろうけど、よく予約取れたね」



「うん」



瑠禾がニッコリ笑って頷いた。



「今日はひな祭り当日のみ限定のデザートがあるんだって。だから今日にした」



「………………」



一体どれほどの競争率を勝ち抜いたのか。



やっぱり、瑠禾はスゴイ。



「ちとせ?」



黙りこくっていた私の顔を覗き込んだ瑠禾に、私はまだ大事な事を言っていなかったのを思い出した。



「瑠禾」



「ちとせ?……何?」



「今日、このお店に連れてきてくれてありがとう。私ホントに嬉しい」






私の言葉に瑠禾は、最初驚いた後で照れ臭い様な笑顔になって、私に手を差し出した。



「それじゃお姫様、お手をどうぞ」



そして私は、私だけの王子様にエスコートされて歩き出した−。




→あとがき

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