いっしょに帰ろう?(1/5)
ステージを照らすライトが、鮮やかにその色を変えていく。
龍が叩くキレのあるドラムが正確にリズムを刻む隣で、櫂が奏でるベースの低音が挑発的に観客を煽る。
そして、瑠禾の繊細なのに大胆なピアノと、雅楽が弾くギターの力強い伸びやかな音色がステージ上に響き渡る。
私は、それらの音に身を委ねながら歌い始めた。
四つの音と私の歌声がキレイに重なり合って、トロイメライの音の世界が紡がれていく。
そして。
曲の終わり、最後の音が余韻を残して宙に消えると。
リズムをとりながらステージを見つめていた観客達から、一斉に歓声と拍手が湧き起こった。
(うん、今日も楽しく歌えたな……)
その場で一つ深呼吸をしてから、私は後ろにいるメンバー達を振り返った。
私の視線に気付いた雅楽は、ニッと笑うと親指を立てて見せる。
瑠禾や龍、櫂も納得のいく演奏が出来た事に満足そうな表情をしている。
そしてまだ続いている客席からの歓声に手を振って答えながら、私達はステージを後にしたのだった。
今日、トロイメライは生放送の歌番組に出演するためテレビ局に来ている。
ライブ形式のセットは、いつもより観客との距離が近くて、本当のライブみたいに盛り上がった。
「ふう。メイク直しも完了っと」
無事に番組が終わって控え室に戻ってきた私は、着替えまで済ませてからソファに座り込む。
(……確か、今日はこの仕事で皆あがりだったよね……)
今回は私一人だけが皆とは別に用意された控え室にいるので、着替えとメイク直しが済んでしまうと何だか手持ち無沙汰だった。
(どうしよう……。“彼”は真っすぐ帰るのかな。……うん、聞きに行ってみよう)
まだ時間的には早いし、それに今日は―。
そう思ってソファから立ち上がった時、ドアをノックする音が聞こえた。
(え?……誰だろう?)
タイミングの良さにちょっと驚きながら、私はドアを開けに行く。
「はい?」
開けたドアの向こうに立っていたのは−。
→まずは雅楽
.
[←] [→] [back to top]
|