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上手なキスの仕方を教えて(4/5)



「‥‥はい」


堅司さんがどうしてそんな質問をするのかは分からなかったけれど、取り合えず『初めて』には違いないのでコクリとうなずいた。


すると、堅司さんはなぜか私の答えに脱力したように大きな大きなため息をつく。


「‥‥‥‥俺は今ほど無自覚を怖いと思った事はないで」


「え?」


あんまり小さい声で呟かれたので、聞き取れなかった。


「堅司さん、今何て‥‥‥‥」


言ったんですか?と続けようとしたその時。


突然、グイッと肩を掴まれて抱き寄せられた。


「きゃぁっ!」


堅司さんのいつにない強引さに、よろけた私は彼の胸に体当たりする形になってしまう。


(いったぁい‥‥)


私も付き合い始めてから知った事だけど。


いつもスーツばかりの堅司さんは、実は結構筋肉質なタイプだったらしい。


それはともかく。







「俺も男やからな、惚れとる女の子にそないにアプローチされたら全力で応えるしかないやろ?」


「け、堅司さん?」


何が何だか分からなくて目をパチクリさせる私の耳元で、堅司さんが低く囁いた。


「キスミークイック‥‥これがあの花の名前やで」


「キス?‥‥‥‥っ!」





『Kiss−me−quick.』

『私にキスして』





「ははっ‥‥ちとせ,そない真っ赤になって口パクパクさしてまるで金魚みたいやな」


顔どころか首の付け根まで真っ赤にして軽くパニックになっている私を見て、堅司さんが笑う。


「それ、は‥‥堅司さんがあんな‥事‥‥」


「別に俺は花の名前を教えただけやで?」


ぐうの音も出ない。


今や完全に私の反応を楽しんでいる堅司さんの胸を軽く叩く真似をしていると、逆に手首を掴まれた。


「ちとせ?」


もう片方の手で私のアゴを捕らえられて、唇が重なる。


「あっ‥‥ん、んん‥‥は、ぁ‥‥」


「ちとせ‥‥好きやで」


「けん、じ‥さ‥」


お互いの唇が深く浅く、僅かに離れてはまた重ねられて。


‥‥そんな蜜が滴るような、どこまでも甘くて熱い口づけに私の体から力が抜けていく。





「なあちとせ、キスだけやないで?俺がどれだけちとせに惚れとるかもこの旅行の間に何度でも教えたるからな?」


耳元で囁かれる言葉にも堅司さんの息遣いにも反応してしまう私の体が、器用に抱き上げられる。


そのまま離れに向かって歩き出す堅司さんの首に抱きつくと、堅司さんが小さく笑う。





頭上にはいつの間にか、まばゆいばかりの星々が煌めいていた。




☆10月19日の誕生花☆
『キスミークイック』
(ハナキリン)




→あとがき

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