残暑



「なあなあ」
「なに」

腕に抱え込む***に声をかければ素っ気ないつれない返事。

「暑くね?」
「そうだね」
「暑いよなァ」
「そうだよ暑いよ」
「冷たくね?」
「そうだね。何でか良く考えたら」
「やっぱクーラー買わねえとダメか」
「そこじゃないね。銀ちゃん今の状態よく見て」
「ん〜いや、やっぱクーラーだわ。クーラーあったら冷えた空間だから暑くねーもん。***ちゃんも、んな冷たく銀さんに当たんないし」
「いや違うし。銀ちゃんが引っ付いてるからでしょ!虫か、引っ付き虫なんですか?」

暑い離れろとばかりに振るわれた手がべしっと顔を叩いた。その手も、顔も互いに汗まみれでぺちゃりと気持ち悪く貼り付く。

「クーラーの効いた空間なら引っ付いても文句言わねェだろ?」
「言うから!絶対に言う!だってなんで上半身裸?直に体温伝わるし汗でじとっとした体触れて気持ち悪くて仕方ないんだけど!」
「シャワー浴びた直後に***が来たからでしょう?え、なに?ムラムラして仕方ない?」
「銀ちゃんの変なこと考えるその頭も気持ち悪くて仕方ない」
「仕方ねェーよ暑さにやられてんだよ。動かねえでじわじわ汗かくの性に合わねえしよォ。ちょっとあっちで運動しない***ちゃん」

指さす先は布団を敷きっぱなしの寝室。

「普段は動かないくせに。ほんと脳みそ虫が湧いてるんじゃないかな」

汗で湿った浴衣の上から胸を揉めば手を抓られる。

「頼むよ***、銀さん死んじゃう。汗で貼りついた髪とかまじやべーから。汗垂れてんのとか舐めていい?舐めていんだよね?」

目の前にある項に口づければじっとりと汗ばむ***の肌に、余計興奮する。

「……っ、ほんと、やだってば」

胸を掴んでいた手に力を入れて揉めば気持ちのいい弾力。

「生で揉みてェんだけど。指の間に肉食い込む感覚味わいてんだけどいい?」
「なに生々しいこと言ってんの?今銀ちゃんに触られたら暑さで溶ける、やめて。絶対やめてよ」

暑さで茹だっているのかさっきから腕や手を抓ったり叩いたりしかしてこない。

「***ちゃんダメでしょそりゃ。嫌って言われたらやりたくなるのが銀さんだよ。だってドSだしィ。だいたい嫌ならもっとしゃんと抵抗しなさい?」
「……暑いのに?ないわ、もっと汗かくじゃん。それに銀ちゃんに抵抗したって無駄だもん。余計興奮するじゃんドS心擽るだけじゃん」

私には損しかないの。

「それは暗にして良いって言ってんの?受け入れ体勢万全ですってか」
「違うっ断じて違うから!!人の話聞いてた?諦めてんの呆れてんの!三十路手前のオッサンが盛りすぎって」
「でも***ちゃんはそんな三十路手前の男が好きなんだよなァ。好きだから逃げねんだよな」

帯締めを外し帯を引き抜けば薄い浴衣は途端に崩れた。嬉々として胸に手を伸ばせば飛んでくる肘鉄。

「いってェ!」
「あーごめんね。でも言ったよね触んないでって。これ以上あつくなったらでろでろに溶けちゃうから私」
「いいじゃねェか、でろでろ。お前の頭ンなか暑いとか気にする隙すらもねえくらい、何も考えらんねえように溶かしてやるから股開けよ」
「……色気もクソもない誘い方どうかして。そして最後の単語が全てを台無しにしてることに気がついて」
「じゃあちょっと四つん這いになってケツ向けて。そんだけで***は何もしなくていいから」
「お願いだから私の話しをきいてくれっ」

乱れた浴衣を胸の前で掴んでヨイショと暑さで重たい体を動かし離れようとする。

「汗掻いたあと絶対ェ涼しくなるから」
「イヤ。今以上に汗掻くのは絶対いや。それに…」
「それに?」
「……私汗臭いから…引っ付きたくない」
「…汗臭い?何言ってんのむしろ」

離れた***をまた腕の中に抱き込むと耳後ろに鼻を寄せる。汗を掻いてるせいで髪に熱気が籠もりむわっとしていて、余計に***の匂いが濃くなっている。

「お前の匂いかなり興奮する」
「……っ、そういうのズルい!」
「ズルくて結構。だいたいお前もズリィよ。汗臭いから引っ付きたくない?んな可愛いこと言ってんじゃねェよ」

汗を掻いてじっとりした肌と髪が肌に貼りついた状態、体が温まって強く匂う***の匂いは情事後に腕の中にいる時と全く一緒で銀時にとっては正に毒。ムラムラして当然。
だらんと垂れていた手が首に回って抱きついてくれば、触れた腕と手が熱くて汗でベタリとするのが不快に感じる反面、無言のOKサインに浮き足立った。

「じゃあお姫様、いきますか」

膝裏に背に腕を回し抱え上げると足で寝室の襖を開け放つ。

「終わったら次は風呂な」
「は…?」

何言ってるのとばかりに表情が固まった***を布団の上に横たわらせのしかかる。

「汗掻いたらちゃんと流さねーといけませんよ。さっきからダルそうにしてる***ちゃんは特別に俺が綺麗に隅々まで洗ってやっから安心しろ」
「やだ、それ安心できない!っん」

反論しようと口を開いたとこを狙い唇を重ね舌を突っ込んだ。今までぐでっとして抵抗らしい抵抗なんてしなかったのに、風呂がそんなに嫌なのかジタバタと暴れ出す。それを容易に押さえ込むと、熱い口の中を舌で舐め上げ舌を甘噛みし唾液を流し込んでやる。

「んんっ…ぅ…」

苦しいとばかりに突き出して追い出そうとしてくる舌にちゅうと吸い付けば、身震いし開いた口端から唾液がつぅと零れた。

「はっ…お前口の中熱すぎ」
「――っだから、いやっていったじゃん…」
「嘘吐くなよな。最後は首に巻き付いて強請ったじゃねェか」

さて何をしてやろうか。とりあえず手始めに此処では普通に、風呂場は直ぐに後始末できるし思う存分嬲ってやろうか。声もよく響くし良いこと尽くしだ。

「銀ちゃん、かお…腹立つ。いやらしいこと考え過ぎ」
「だって楽しくて楽しくてたまんねェんだよ。ご機嫌斜めで俺に当たり散らしてた***がこれからどう乱れていくか考えたら」
「へんたい…」

頬を膨らませそっぽを向く表情は誰がどう見たって満更でも無さそうで、これから素直になっていく様を想像すれば愉しくてたまらなくなる。

「んな満更でもない顔して言うなよ」
「してないしっ!!」
「ハイハイ、つんつんするお前はもう黙ってなさい」

ほとんどはだけていて役割を果たしていない浴衣を左右に開けば、もう暑さなんて気にする余裕は一気に吹っ飛んだ。








「銀ちゃんサイテー…」

向かいのソファーで体を守るように小さくなり、濡れた髪を拭きながら睨んできた。

「あ?涼めただろうが」
「涼めた?どの口が言うの!」
「このかっこいい銀さんの、***を喜ばせるためにあるお口ですー」

***がさっきから何を怒っているのか。

「暑いって言ってるのに、こんなに痕残されたらこれからどんな服着ればいいのよ」

首、胸元、手首、足先。
夏場は絶対に出す部分にこれでもかと赤い鬱血の痕。

「何が私を喜ばせる口じゃああ!その口がつけたんだよね?真逆じゃん!殺す気か!!」
「大体お前さあ、丈の短ェ着物着すぎなんだよ。襟元だって襟抜きすぎ。遊女かオメェは。そのうち帯も前で結ぶんですか?いいよ別に銀さん専用の遊女なら、でもな見てるヤツは見てんだよお前のこと邪な目で。新八とか可哀想と思わねェの?童貞だよ?お前の体は刺激強いわ」
「邪な目で見てんのは銀ちゃんでしょうが!誰が遊女だ彼女です!」
「よく分かってんじゃねェか。そうです俺が一番邪な目でお前のこと見てんの」
「開き直んないで!」
「怒るくらいなら誘う格好すんなって言ってんだよ」
「別にそう言う事するのが嫌で怒ってんじゃないの!暑いって言ってるのに涼しい服着れなくさせられたことに怒ってるの!大体どうするの?これで新八くんと神楽ちゃん帰ってきたら目も当てられない…」

今日も変わらず丈の短い浴衣を着ていた***は、胸元はこれでもかと言うくらいに詰められていて見えないが、隠しようのない首、手首、足先は赤い痕が惜しげもなく晒されていた。

「ちょいちょい、***ちゃんちょっとこっち来いよ」

手招きすれば警戒しつつも隣に腰を下ろす。あれだけ発散したらもうしないと思ってんのかな。コイツチョロすぎ。
近くで見ると確かにつけすぎたかもと反省するも、濡れた髪を掴み引き寄せる。

「ちょっと…、なにするの」

***が手にしていたタオルを奪い取ると、頭に被せて長い髪の水気を取る。

「オメーいま勢いですっげぇこと暴露したよ?素面で初めて聞いたんだけど」
「なにが?」
「銀さんとのセックス大好きって言った」
「……言ってないいい!!!」

少しの間の後に、ボッと耳まで真っ赤っかに染まる***。

「お前ェが素面で嫌じゃない言ったときは大抵好きとかそんな感じだろ。素直じゃねェーからなァ」

まあ素面とそうじゃない時のギャップとか見てて楽しいんだけど。

「で、お前の大好き発言でくたびれてたはずの銀さんのぎんぎんさんがギンギンになっちまってよォ。責任取ってくんない?」
「無駄に韻を踏むなッ!!」

髪を拭いていたタオルを***の目元まで被せ後ろで縛ると、そのままソファーに引き倒す。視界を塞ぐタオルを取ろうとする手を掴んで阻止すると帯を外し縛り上げた。

「ちょっと…嘘だよね?」
「3ラウンド目に突入しようか」
「嘘だと言ってぇええ!!!!」




暫くは暑い日々から
抜け出せそうにありません

♭16/09/05(月)
♭22/10/10(月)



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