爪先の欲



ぴかぴかに整えられた爪を見て***はかわいいネイルに気分が上がった。
甘酸っぱくって食べたらもちろん美味しくて、パフェや盛り付けに使われると綺麗にパフェグラスを飾る姿が魅力の食べ物。苺。
それが今***の爪を彩っている。苺の赤いフォルムが爪の先に並んで、指によっては練乳や生クリームがかけられとろりと垂れる演出まである。
しばらくお腹が空く度に、爪を見て堪えなければならないのだろうなと思うものの、苺なら耐えられるような気がしないでもない。たって好きだもの。

なのに現在隣に座ってジャンプを読んでいる万事屋の社長さん、こと、坂田銀時にはどう映っていたのやら。
第一声は

「なにこのザー〇ン塗れの爪。手じゃぶじゃぶ洗ってきた?そういうことしたあとは清潔にしなきゃいかんよ」

女の可愛いネイルに向かってこれだ。

「ネイル!可愛い彼女の可愛い爪になんてこと言うんですか!つーか銀ちゃん以外と有り得ないんですけど!」
「おーすげぇ完璧なツッコミ」
「何が完璧?こっちはかわいい苺に卑猥なケチつけられてお冠です!」
「卑猥だろ赤い実に白いのがどろっと垂れるシチュは。誰ですか、お前の爪にこんな卑猥なもんデコレーションしたの。銀さん許しませんよ」
「卑猥なのは銀ちゃんの頭!許されないのはそのお口!」
「あァ?誰の髪の毛がちぢれ毛だ!」
「違う外見じゃなくて!脳みその方!」
「あ、そっち」
「そう、そっち」

はあ、と溜め息をつく。
人の話を聞かないどころか、爪を見てすごく歪曲的な見方をするなんて。
そんなに卑猥かな。指を伸ばして爪を見れば目の前がぐるぐるしだす。聞かされた言葉のせいか、何故かだんだん卑猥に見えてきた。

「え、ぇえ、なんで?」
「ひとりで爪見てなにやってんの?」

銀ちゃんに色々言われる前は甘酸っぱくて赤い苺がデコレーションされてすごく可愛く見えていたのに。

「全部銀ちゃんのせい!練乳と生クリームが卑猥なものにしか見えなくなっちゃった!」
「ん、そうよかったな。早くネイルショップ行って取ってこい」
「何も良くないよう。いくらかかると思ってんの?」
「そう、じゃあ取りたくなるようにしてやろうか」

ぱたりとジャンプを閉じて横に置くと、何を考えているのか分からない顔が***を見た。
手が伸びてくるのを思わず避ける。

「な、なにするの…?」
「卑猥なこと」
「真昼間から何言ってんの?」
「可愛い可愛い***に俺の白いのいっぱいぶっかけてやろうと思って」

ひくりと喉が引き攣った。
銀時の手が胸の膨らみを着物の上からさすると揉んでくる。

「***の可愛いみっつもある果実に塗りつけてどろっと垂れんの、この爪より俺は可愛いと思うけど」

財布の入ったかばんを震える手で引っつかむと、銀時の手を潜り抜けて万事屋を逃げ出していた。
そのままその足でネイルショップに駆け込んだのは言わずもがな。



♭2023/11/08(水)



(1/1)




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -