小説 | ナノ
 


私の知っている遊馬崎さんはいつも狩沢さんとアニメやラノベ、漫画の話ばかりして楽しそうにしている。その時の遊馬崎さんは、私では引き出せない顔をしていた。



私は今、狩沢さんと遊馬崎さんの3人で、ファミレスでお茶している。
最初は遊馬崎さんと二人きりで店を回っていたのだ。しかし、休憩の為にファミレスに入ると、偶然狩沢さんと出会い、今に至る。

「あっ、あのー、新しく出来たカフェがあるんですけど…」

私の声が聞こえていないのか、相変わらず二人にしかわからない世界の話で盛り上がっている。二人の話に入ろうとどうにか頑張ってみたが、敢なく撃沈。私に分かる次元の話ではなかった。

「何と言ってもツンデレの代名詞はハルヒっすよ!」

「いやいや、ここはやっぱりルイズでしょう!」

「わかってないっすね!好きな子の前では素直になれずに不機嫌だけど照れてるハルヒが可愛いんじゃないっすか!!」

「そんなのツンデレキャラだったらデフォよ、デフォ!皆一緒でしょ。でもルイズは心の中ではサイトを心配してるのに、その気持ちを言葉では恥ずかしくて上手く伝えられないっていうツンデレキャラの最上級よ!」

もう一度話し掛けてみたが、自分にさえ聞こえるかどうかの声しか出ず、驚いた。休日のせいかかなり賑わっているファミレスでは、私の弱々しい声は二人には届かなかった。
遊馬崎さんと会えるっていうから、気合いを入れた服装をしてきたのに。手持ち無沙汰になってしまい、スカートをぎゅうっと握り締める。皺になる、と頭では分かっているが、どうにもできない。
どうして狩沢さんとばかり話して、私に構ってくれないのだろう。××、一緒に買い物行かないっすか?と誘ってくれたのは、遊馬崎さんだったのに。
二人の会話は白熱し、不機嫌になってる私の様子には気付かない。さっきから周りの目が痛いのになぁ。

二人で居る時でさえ、狩沢さんが、狩沢さんって、と遊馬崎さんは私にいつも話する。二人で居る時でこうなんだから、実際に狩沢さんが居る今、もう止まらない。
以前は狩沢さんのことを、姉のように慕っていたが、今はもう顔も見たくない。遊馬崎さんの口から出る「狩沢さん」という言葉を、全部ごみ箱に入れて捨ててしまいたかった。

嫉妬しちゃって格好悪いな自分…。もう、もう帰ろう。

静かに椅子を立った。

「…遊馬崎さん、狩沢さん。用事あったの思い出したので、私帰りますね」

そう言って二人の返事は聞かずに自分の代金だけ置いてレジに向かった。
引き留めて貰えるかと、淡く頭の中で期待したけれど、そんなものすぐに打ち消す。私が帰ることに驚いた狩沢さんに話し掛けられ、後ろを振り向く。

「えっ、××ちゃんもう帰っちゃうの?」

「ごめんなさい、自分の分は払っていくので…」

仲の良い二人を見るだけで、胸が張り裂けそうになってしまう。それじゃあ、と言って視界から二人を消した。















「…ねぇ、ゆまっち」

「なんすか?」

「××ちゃん帰っちゃったけど本当にいいの?」

「何言ってるんすか」

「××は、俺と楽しそうに話してる狩沢さんに嫉妬してるくせに、そんな風に思ってる自分が嫌いで、頭の中グチャグチャになって泣きそうになってる時が一番可愛いんっすよ」

2011.6.3
2013.01.26 改訂



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