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授業も終わり、放課後、奥村先生に呼び出されたしえみを教室で燐と二人で待っていた。
しえみには「ごめんね××ちゃん、燐!すぐ戻って来るからねっ」と謝ってる割に嬉しそうに職員室に向かったって行った。
まぁ、それもそうか。
奥村先生カッコイイもんなぁ。
燐もカッコイイと思うけど、先生の方が綺麗な顔立ちしてるし。


その時はたまたま話す内容がなくて二人でボーッとしていたが、いつの間にか気付いたら私の右手にしっかりと携帯電話が握り締められていた。
鞄の中に入れていたはずなのに、無意識のうちに携帯をポケットから取り出していたんだろうか。

握り締めていた携帯を眺め、ふと思ったことを燐に話してみた。

この感覚を何て言って良いのかわからないが、誰かと繋がっていないとすごく不安になる。
今は携帯という便利な機械があるからすぐに連絡が取れるようになったけど、携帯がなかったら生きていけないかもしれない。

「そうか?俺、携帯そんな使わないし別に不安にならないけどな」

生きていけないっていうのは言い過ぎじゃねえ?と燐は笑って言うが、現役女子高生なんてものは何をするにも携帯を片手に持ち離さないものだ。
ご飯を食べるいる時も、お風呂に入る時も、友達と話している時も、離さない。

「…自分でもよくわかんないけど、時々すごく不安になるんだよねぇ」

だから携帯電話を手放せない。
隣に誰かが居ないと寂しくて、隣に居られないなら、せめて電話でもメールでもいいから繋がっていないと寂しい。

「特に夜が無性に寂しくなるから、夜中いきなり燐に電話しちゃうかも」

頬杖を付きながら冗談めかして言うと、燐は驚いたような顔をした。

「りーんー?どうした?」

声を掛けても固まったまま動かないから顔の前で手を左右に振ってみたが反応がない。

「ちょっと、本当にどうしたの」

声を掛けても手を振っても反応がないからかなり心配になり奥村先生を呼ぼうと席を立ったが、燐に腕を捕まれその場に留まる。
固まったままでいた燐が、腕を掴んだことに動揺しているのか目を左右に動かしそして少しの沈黙のあとまるで決心したかのようにゆっくりと口を開いた。

「…あ、のさ」

「……うん」

緊張が伝わる。
乾いた唇を舐めた。

「さっき寂しいと電話掛けるって言った、だろ?××はそういうのこと誰にでもすんのか…?」

「さっきのって……あぁ。そんな誰にでもする訳無いでしょ。迷惑掛かっちゃうし」

「…俺には迷惑掛けてもいいのかよ」

さっきは嬉しそうな顔したのに今度は拗ねたような顔をしている。

「えー…何で拗ねんのさ。別に燐に迷惑掛けてもいいって思ってるわけじゃないよ、ただ燐の特別というか、つい寂しくなった時連絡取りたくなるっていうか…」

だから一緒に居ると寂しくないんだよね。

その一言で機嫌が治ったのか嬉しそうな顔してる。

「ご、ごめんね〜、遅くなっちゃった…!」

「おー!遅ぇぞしえみ。さっさと帰ろうぜ」

「お疲れ、じゃあ帰ろっか」

はぁはぁと職員室から教室まで走ってきたのか息切れしているしえみの肩をポンッと叩き教室から出る。

今日は携帯を握り締めたまま眠るような、不安な夜を過ごさなくても済みそうだ。





2011.10.23



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