小説 | ナノ
 


「あ゙〜喉痛い」

昨日から鼻水は出るわ、喉痛いわ、体は軋むはで散々な一日だったが、今日の方がもっと最悪だった。
流行真っ只中のインフルエンザだと病院で診断されたからだ。こんな体調で塾には行けないので、休みの連絡を入れると、受験前だというのに体調管理が出来ていない、と叱られた。そんなこと言われてもインフルエンザに罹るものは、罹る。去年だったか、一昨年だったかは忘れたが、予防接種を受けたのにも関わらず、A型B型両方罹ったのだ。
こればっかりはしょうがない。

私の場合、インフルエンザもただの風邪も、薬を飲んで1日ぐっすり寝れば、治る。
治るが、人間の心理として、病気の最中は人恋しくなるものだ。

「清志に会いたいなぁ〜…」

口に出したことで、寂しさがより増した。只今絶賛ラブラブ中の彼氏様、宮地清志にメールでもしようかと思い、携帯を握った。が、しかし、携帯を開いて目に入ってきた数字は、塾の開始時刻を指していた。清志とメールして寂しさを紛らわせようと思ったのに……!

くそっ、この携帯叩き割ってやろうか!

「おい、病人なんだから大人しくしろよ。轢くぞ」

ドアがノックされて、廊下から人が入って来たと思えば、そこに居たのは清志だった。

ベッド前に敷かれているカーペットに、どさりと座った。

「先生からさ、今日お前がインフルで休みって聞いたから笑いに来た」

「え!お見舞いとかじゃないの!?俺がお前の風邪貰ってやるよちゅーのイベントじゃないの!?」

「元気そうなら俺帰るわ」

「ちょっちょっごめん!謝るから帰んないで…!」

清志に会いたい、話したいと願っていたら、まさか本当に会えるとは。思わず、ふざけたことを言ってごまかしてしまった。だって、自分だって受験近いのに、わざわざお見舞いに来てくれるとは微塵も思わなかった。

今まで私が風邪を引いても、良くて電話、悪くてメールをくれるだけだった。今回もメールで罵倒され、最後にちょっぴりキュンッとくる文章を打ってくれるのかと思っていた。
しかしこれは、嬉しい誤算だ。

「ありがと、清志」

「……おー」

照れたのか、清志は私に見えないように顔を背ける。照れた顔が見たくて覗き込むと、また顔を背けられた。ふいっ、と頭を動かした時に、金色の髪から微かに見えた耳が、真っ赤に染まっていた。

そんな可愛いことをされたら、また熱が上がっちゃうよ、清志。




2013.01.26



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