アズール先輩と契約する話

軽い気持ちで手を出した試験対策ノート。私は担保の代わりに試験対策ノートを手に入れた。
「アズールの契約はえげつないから止めとけ」って寮の先輩は言っていたけれど、それに縋るしかなかった。
真面目に勉強してもいい点は取れないし、親に優秀な兄と毎回比較されるのも嫌だった。
今回のテストの結果は……百点!
平均点がどれだけ高かろうと関係ない。在学中に百点を取ったことのない兄よりも上にいけた。それだけで嬉しかった。親への報告のためにマジカメにアップしようと思い、試験結果を撮った。
結果をアップして数分後、親からの確認いいねがついた。自慢だと思われたくないから投稿を消したその時。
「おや、いい点は取れましたか?」
声をかけてきたのはアズール先輩だ。怖いくらいニコニコ笑っている。
気圧されてはダメだ。私も満面の笑みを浮かべる。
「はい! アズール先輩のおかげです! ありがとうございます! 私も一位を取ったんですよ! まぁ、一位もたくさんいますけどね」
「残念ですね」
アズール先輩は大袈裟に悲しげな顔を作る。私は全然悲しくない。担保にしたものは持っていかれない。
私が担保にしたのは、私自身だ。
「それは、私が手に入らないからですか?」
ラウンジの労働力としても、魔法の実験台にもなる可能性があった。例えどれだけ酷い環境だろうとも、アズール先輩は手加減しない。そんな予感がした。
「そんなこと、一言も言っていませんよ」
「ですよね! 私、アズール先輩が関わるものには手を抜かないんで。それから――私のことが好きなら告白したらどうですか?」
他の生徒に絡まれようとも一直線に私に向かってきた位だ。わざわざテスト対策ノートの存在を直接教えてくれた。それに、ノートを貰ってから、何度も細かい指導を受けたのは私だけだ。
「す、好きとは言ってません。それより、あなたも僕が好きなら告白したらどうです?」
アズール先輩はさっきまでの余裕の表情とはうってかわって、真っ赤にして明らかに動揺している。
「告白されたいんですか? 冗談ですよ」
アズール先輩は黙って背中を向けた。
「私は忙しいのでこれで失礼しますね」
アズール先輩は告白について何も答えなかった。
「あ、そうだ。卒業まで全てのテスト対策ノート楽しみにしてます!」
確か五十位以内に入ったら貰える約束だった気がする。アズール先輩と関わるチャンスは、少なくともテストの回数分はある。この先のノートも、アズール先輩の反応も楽しみだ。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -