自決少女

汽車に乗ったら夢を見た。幸せな夢だ。
私は女学校に通っていて、『私たち』の憧れの方が訪問される日だった。みんなソワソワしていて、いつもより髪は綺麗で、ワクワクしていた。
工場や人々の喧騒でうるさい中、女学校の敷地内はとても静かに保たれていて生徒たちの話し声が響いた。
誰がどこに嫁ぐだとか、いつ学校に来られなくなるのだとか、恋をしただとか、父親の事業が倒産しただとか、先生が素敵だとか、話題に溢れていた。
そんな世界が滅びる夢。私がスイッチを押すと全て端から崩れていった。子を抱えた女性は地面の裂け目に落ちていき、工場は崩れていく。窓ガラスの破片が飛び散り、木造の校舎はガラガラ音を立てる。私に向かって校舎の柱は倒れてきた。柱を見つめてじっとしていると、柱は私をすり抜けて土埃をあげて床にぶつかる。世界から音が消えても私を殺してはくれなかった。悲しくて近くにあった窓ガラスの破片で首を切った。きっとこれで世界は終わり。
私も含めた人類は滅亡して、私を取り残したまま幸せな夢は続いていく。
夢の中で意識を失ってからガタン、と地面が揺れる感覚があった。
ガタゴトこの場所が鳴る。ここは汽車の中だ。
あぁ、私は夢から醒めてしまった。
「あれ〜? もう起きちゃったの?」
片方の瞳の中に下壱、もう片方の瞳の中に一と書かれた人が目の前にいた。男の毛先は紅く、パタパタとはためいている。
「もう少し、眠っていたかったのですが……」
「じゃあもう一回、見せてあげるよ」
目の前の男は手の甲にある目玉を私に向ける。
私のいる場所が女学校に変わる。また夢の中だ。
私は家族に囲まれている。女学校に家族が入れるわけがないのに。
「お前なんて産まなきゃよかった」と泣く母。
「父はお前を売ろうと思っている」と見つめる父。
「そうすれば家は救われた」私をチラリとも見ずに言う弟。
「そうだね」
私は笑うと机の中からナイフを取り出した。鉛筆を削るための小さなナイフだ。それを強く握って腹に刺した。
「お前が男だったら――」
男に産まれなかった私が死ねばいいんだもの、理解している。だから実行しよう。
腹から血が流れていく。このまま女の臓器まで流れてしまえばいいのに。
冷えた感覚はなく、またガタゴトと身体が揺らされる。
「キミはそんなに死にたいの?」
「夢の中なら、勇気が出ます」
「じゃあ俺が殺してあげよう。幸せな夢の中で、苦痛も感じずに。そのために、俺に協力してくれるかい?」
「……はい」
「それじゃあ、鬼狩りが来たら俺の指示に従って。大丈夫、幸せな夢をみせてあげるから」
男は顔の模様を歪ませて綺麗に笑った。
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -