「え、綱吉さんが嫉妬?」
可愛い可愛い俺の彼女、名無し。
本当に可愛くて目に入れても平気なんじゃないかってぐらい愛おしい。
だけど彼女にちょっと、ちょぉっと問題があったりする。
「そんな、何かの冗談ですか?綱吉さんが私なんかに嫉妬するわけないじゃないですか」
「………はぁ」
「綱吉さん?」
頭を垂れて項垂れた俺に近寄って顔を覗き込んでくる名無し。
ああ本当に可愛い。 …じゃ、なくて。
「あのさ、名無し。毎回毎回言ってるけど俺だって嫉妬ぐらいするからね?」
ていうか寧ろ毎日嫉妬ばっかなんだけど。
名無しは客観的に見てもすごく綺麗な顔をしてる。
俺が彼氏になるためにどんなに頑張った事か。
だからつまりそう、色んな奴らに絡まれやすい。
守護者を筆頭にリボーンは勿論、ヴァリアーの奴らやディーノさんにまで狙われる始末。
当然俺としては気が気がじゃないわけで。
しかも本人が無自覚ときたもんだからどうしようもない。
「嫉妬って……ああ!」
「やっとわかっ」
「リボーンさんのことだったんですね。そうとは知らず長話なんかしてしまって……綱吉さんからリボーンさんを取ってしまってたんですね。ごめんなさい」
「いやいやいやいや、違うからね?俺が嫉妬したのは名無しにであって決してリボーンになんかっていうかあいつなんかどうでもいいんだけど、」
「もう綱吉さん、私の為に無理して嘘付かなくても大丈夫ですって。そんなに心配しなくても綱吉さんの気持ちはちゃんと分かってますから」
わかってない。 ちっとも、ちいっともわかってないよ名無し。
なんて天然なんだ。 そんな所も可愛いけど。
くっと後ろを向いて気付かれないように拳握る。
「あの名無し……」
「大丈夫です、ちゃんと、わかってるんですよ。私が本当は綱吉さんなんかに釣り合わないってことくらい」
「え……?」
「綱吉さんは完璧で、強くて、優しくて、だから私に嫉妬なんかしないはずなんです」
弱々しい笑みを俺に向けたかと思うや否や顔を俯かせる名無し。
サラリと耳にかかっていた艶やかな黒髪が流れて彼女の輪郭を隠してしまった。
ぽつりぽつりと、消え入りそうな声で言葉を紡ぐ。
「自分でもあなたから離れなきゃって、いつも思ってるんですけど……やっぱり、離れたくなくて」
「…………」
―――ああ、そっか。
彼女のこの勘違いぶりには少なからず俺のせいも含まれているようだ。認めよう。
だったらちゃんと、本当のことをおしえてあげなきゃね。
「こんな、わがままな私のことを、嫌いになりますか?……っわ」
少しだけ潤んだ瞳で顔をあげた名無しを衝動的に引き寄せる。
安心させたいからってのもあったけど、正直きそんな瞳で見つめられたら色々我慢出来そうになかったから。
情けないな、俺は。
「……名無し。良い事教えてあげる」
「……?」
「俺は名無しが思うような完璧な人間じゃないよ」
「っ、だか」
「黙って聞いて」
反論をしようとした名無しの体を一層強く抱きしめてそう言い放つと、彼女は大人しく口を閉じた。
とくん、とくん。
すこしだけ速い彼女の鼓動が伝わってきて、自然と頬が緩んだ。
「失敗だってするし、どうしようもなくここから逃げ出したくなる時もあるし、弱音を吐く時もある。名無しからそれが見えないのは、俺はちょっとだけに人に比べてそういう感情を隠すのが上手いから。こんな事言ったら幻滅するかもしれないけど、毎日嫉妬してばかりだからね。他の男とお前が話すのも、他の男がお前に触れたるするのもだめ」
「……うそ」
「本当だって。できる事なら一生誰の目にも触れない所に閉じ込めて、俺だけの物にしたいっていつも思ってる。俺だけがお前に触れて、キス出来る」
「……いい、ですよ。綱吉さんなら」
「そういうこと言うと本当にやっちゃうよ?」
も、本当だめだって。 何この可愛い生き物。
俺の背中に手を回したかと思いきや抱きしめるんじゃなくてスーツ握るとか。 小さく肩が震えてるとか。
やばいんですけど、襲っていいの? いいのこれ?
「……綱吉さん?」
「っ、…とにかく、俺が名無しの全てを知らないように、名無しだって俺の全てを知ってるわけじゃない。ただ心の底から名の事を愛してる。これだけは知って置いて」
「……はい」
なんとか暴れ狂う心の中の獣を抑えつつ、小さな彼女の頭を撫でる。
あー、柔らかくてふわふわしてて、気持ちいなぁ。
と、何か思い立ったのか名無しが不意に俺の胸に埋めていた頭をあげた。
「あ、の」
「うん?」
「私は、可能な限り、綱吉さんのことを知りたいです」
「うん」
「だから、」
「だから?」
「私の全てを見せたら、綱吉さんの全てを見せてくれますか?」
「…………」
「……それとも、こんな欲張りな彼女はいや……んっ」
……だめだ。 だめだよ、うん。
だって名無しが悪い。
さっきから散々我慢してきたのにさ。
どうしてそんな可愛い声で不安そうに見上げてくるのかな。
これってもしかして俺試されてる? じゃあ負けでいいよ。 いい加減限界。
噛み付くように荒らす。
歯茎の並びを確かめるように沿って、逃げようと縮こまる可愛らしい舌に無理矢理り吸い付く。
鼻にかかる甘い吐息を漏らしながら力が抜けていく名無しの体を支えながら、さて次はどうやって愛を囁いてやろうかとぼんやり考えた。
あー、天然って怖いなあ。
アモローソ、君へ
それでもまだ分からないようなら 息が出来ないくらいキスしてあげる
──────────────
「コルキス」の瑠璃さまからいただいてきましたっ
事情があって閉鎖されるようですが、ずっとずっと、それこそ、ずぅぅぅっとストーカーさせてもらっていたのですごく残念です
また、いつか巡り逢えるといいです!
この場を借りて、失礼しました
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