今日も朝から隼人くんと学校へ行く道を歩く。



「昨日のケーキおいしかったね〜」

「そうだな」

「ごめんね?隼人くん、甘いの苦手なのにつき合わせちゃって」

「別に気にしてねぇよ」

「ホント?よかった」



学校までの道のり、約20分。
今日もあっという間についてしまった。



「じゃあ、また帰りにね」

「おう」


笑顔で手を振ると、隼人くんは私の頭をクシャクシャっと撫でて歩いて行ってしまった。


…ちゃんと笑えてたかな、私。


いつものように学校に来て、いつものようにクラスの前で別れて。


…今日は付き合って1か月の記念日なのに。


少しくらいなにか違うことがあってほしい、って思うことはワガママ?

それとも隼人くんは忘れたゃってるの?


…わかんないよ。




結局、ずっとモヤモヤしてて授業なんか頭に入ってこなかった。




そして昼休み。


「ねぇ、隼人くん、私のこと好きじゃないのかな…」


お弁当を食べながら、友達の可奈と七海に泣きついた。


「はぁっ!?何言ってんのあんた!」

「そうだよ!あんな大事にされてるのに!」

「だって、好き、なんて絶対言ってくれないんだよ?それに…」



じわーと目が涙で滲んできて視界がぼやける。


「あーもう、亜依は相変わらず泣き虫だなぁ」


可奈がよしよしと頭をなでてくれた。


「で、どうしたの?」


七海は呆れたように、でも心配しながら、聞いてきた。



「…今日ね、隼人くんと付き合いはじめてからちょうど1か月なの」

「そうだね、おめでとう」

「おめでと」

「2回もありがとう」


2人は朝も真っ先に言ってくれんだ。



「でね、朝から何か言ってくれるの待ってたんだけど…何もなかった」

「それって多分…」

「?」


ねぇ?
と2人が顔を合わせる。



「大丈夫、亜依はおとなしく待ってればいいよ」

「うん。ほら、もうチャイムなるし早くお弁当食べないと」

「何が大丈夫なの?なんで?とういうこと?」「ね〜、次の授業何だっけ?」
「えっと…国語だよ」

「ありがとー」




2人とも私を無視して…

もうわけがわかんない!



すぐにチャイムがなり、お弁当を食べる気にもなれなくて素早く片付けたあと、次の授業の準備をした。





とうとう放課後。

もうみんなは帰ってしまって、教室には私だけ。



授業中、ずっと考えてたけどわからなかった2人の言葉の意味は、どんどん嫌な方に想像は進んでいく。



告白したの、私からだし隼人くんは私のことなんとも思ってないのかな…。



いつもなら楽しいはずの隼人くんが来るのを待つ時間。

今日はなんだか怖くて。



そんなことを考えてると


「亜依」


後ろから隼人くんが入ってきた。



さらさらな銀髪が夕日の温かいオレンジに照らされて、きれい。




「ワリィ、待たせたか?」


少し急いで来たのか、息があがっている。


「うぅん、大丈夫。…帰ろっか」


笑って隼人くんに近寄る。


動いてないとまた嫌な方に行くし…。


でも隼人くんは動かなかった。

「…隼人くん?…どうし、わぁ!?」




隼人くんの顔を覗き込もうとすると、ガシッと脇の下を掴まれてヒョイと持ち上げられた。

そのまま机の上へ座らされ。



「あの…、隼人くん?」



座らされたと思ったら、隼人くんは後ろを向いて何かゴソゴソし始めた。



「はーやとくんっ!放置しないでー」



足をジタバタさせても反応なし。



…やっぱり私のこと、なんとも思ってないのかな。


今俯いたら涙が溢れそう。

すでに溜まり始めている涙が零れないように気をつけながら、うえを向いた。


だから私は、こっちを振り返った隼人くんに気づかなくて。



「亜依」



呼ばれて顔を上げる途中に気づいた。

私の手首にシンプルな、かわいいブレスレットがはまっていることに。



そして無意識に呟いた。



「…かわいい」

「良かった…」


ホントにホッとしたように隼人くんが私をはさんで机に手をついた。


その言葉にハッとする。


「これ、隼人くんから…?」

「…」


隼人くんは俯いて何も言わない。


沈黙は肯定、って言うよね?



「これ、どうしたの?」

「…今日だから」

「?、何が?」

「…1か月の記念日」


よく見たら隼人くんの耳が真っ赤で。

覚えててくれたんだ。



そう思ったら、気持ちが温かくなって、愛しさがこみ上げてきて、気付いたら隼人くんに抱きついてたんだ。


「!?、ちょ、亜依っ!」



隼人くんはジタバタしてたけど、



「…ありがとう」



いっぱい、いっぱい、伝えきれない気持ちを込めて言ったら、大人しくなった。



「おう」



せっかく涙をこらえてたのに。
もう溢れて止まらないよ。




「お前、相変わらず泣き虫だな…好きだぜ!」



付き合い始めてから始めてもらった貴方からの物、言葉。

忘れられないよ!







お題提供サイト様 stardust





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