梨奈は珍しくひとりになれた。


いつも仕事ない日は誰かが付きまとって梨奈をからかって遊ぶんだけど、今日はみんな忙しくて周りには誰もいない。



久しぶりの自分の時間を、大好きな読書の時間にあてることにしたらしい。



読書を始めてから早2時間。

梨奈の座っている椅子の周りや前にある机には、読み終えた本とこれから読む予定の本が積み重なっている。



あ、今一冊本を読み終えたのか、本を閉じたかと思うと満足げにため息をついた。

…かわいいなぁ






俺、沢田綱吉が何故こんな、梨奈の実況のようなことをしているかというと、昼、俺が仕事している執務室に来たかと思うとおもむろに本を読み始めたからで。


梨奈が本を読んでいる2時間、執務室は俺がペンを走らせる音と、梨奈がページを捲る音だけしか音はなかった。


仕事を邪魔されるのは困るのだが、俺がいるのに無視されているのは何か嫌だ。

俺は梨奈の彼氏なのに…



てか、こんなこと言ってるうちにも梨奈は新しい本を読み始めていた。



「梨奈、」

「んー」

「梨奈ー」

「んー」



駄目だ、完全に本の世界に入ってる。



「おーい」


軽くウェーブのかかった、綺麗な髪を一房持って指でクルクルしても反応なし。


ここまで無視されるとおもしろくないから、


「梨奈、―――――していい?」

「んー」


承諾をもらったことにした。



ということで、梨奈の本を取り上げて、


「あっ!?」


押し倒した。



「え、何……ツナ?」



いきなりの俺の行動にキョトンとしている梨奈に、噛みつくようにキスをする。



「…!」



一度離し、角度を変えて次は優しく。



梨奈はされるがままになっている。



と、それは次の俺の行動で暴れるようになった。



そう、俺が梨奈の首筋にもキスし始めたから。



「…!?…ツナっ!」



梨奈が俺を押し返そうとするけど男と女の力じゃやっぱり男が勝つわけで。



「…っ」



梨奈が一瞬の痛みに目を瞑る。


俺が首筋から唇を離して見ると、そこには俺の所有印。



「…バカツナ!
私、いいって言ってない!」



梨奈は交渉とか、そういう仕事が多いから、俺が人から見えるような場所に印を付けるのを嫌がる。


だからいつもは、梨奈からの許可がないとつけないのだが、今日は仕方ない!

無視する梨奈が悪いから。



「もー!
明日も交渉なのに…」


「俺、悪くないよ」


「はぁ!?」


「だって俺、ちゃんと梨奈に聞いたもん
『首筋にキスしていい?』って
梨奈、『うん』って言ったじゃん
よく思い出してみて」



そしたら梨奈は、少し考えたあと、青くなって。


「………確かに言ったかも…」


「ほら、
梨奈のせい」






(…っ、ずるいっ!)
(俺を無視する梨奈が悪いんだろ)











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