ごめん、意気地無しで

ごめん、勇気がなくて



ごめん、梨奈に言わせて


















「ツナ…、」

「わかってるよ」


リボーンの言葉を無理やり遮る。

いつもは意地でも最後まで言うリボーンが気まずそうに口を閉じるのが、無性にイライラした。



「…今日、ちゃんと梨奈に言う」


「…わかった」



もう何度、この会話をしたのか覚えてない。


それでも何も言ってこないのは、リボーンにも後ろめたさがあるのか。

それとも、ただ単に優しさなのか。


…たぶん最初のほうだろう。



リボーンだって、…自分の結婚相手ぐらい、自分で決めさせてあげたいはず。


でも、
俺がそうするしかないのは、

政略結婚するしかないのは、


俺が「ドンボンゴレ」だから。
俺は、リボーンが俺の前に現れなかったら、「ドンボンゴレ」にはなっていなかったのだから。


だからリボーンは、そのことに対して俺に強く言わない。いつもみたいに、むちゃくちゃしてくれればいいのに。

俺はそのリボーンに甘えて、すがって、梨奈に別れを告げれないから。




でも、



「…今日、言うよ」



もう政略結婚の日は迫っていて、これ以上梨奈を引き止める訳にはいかない。


俺は自分に言い聞かせるように、呟いた。










* * *








「ね、ツナ…」


隣で笑う、梨奈を抱きしめた。

梨奈は少しびっくりして身じろいだけど、大人しくしている。


「…」

「…」


何も聞かずに、包み込むように抱き締め返してくれる梨奈が、どうしようもなく、愛しかった。



溢れる熱のまま梨奈にキスして、そのまま2人、ベッドに倒れ込んだ。

これが最後、と自分に言い聞かせながら。








* * *








するっ、と絹のすれる音がして、意識が覚めた。


音の主は梨奈。


こっちに背中を向けて、服を着ていた。


そして近くにあった台に何かを置いて、

こっちを向いた。


俺は慌てて、目を閉じた。



何で目を閉じたのか、わからない。

でもなぜか寝ているふりをしなければいけないような気がして。





近くに梨奈が立つ気配がした。

どんどん近づいてくる顔。



ちゅっ、と小さなリップ音と共に、流れ込んでくるような感情。


好き

愛してる

さようなら


思わず泣きそうになった。

思わず梨奈の手を掴みそうになった。


思わず、好きだと叫びそうになった。



それでも俺は寝たふりを続けて。




ごめん

幸せにすると、約束したのに


ずっと2人で笑っていようね、て約束したのに





思いを伝える代わりに、



「梨奈」



と、呟いた。







涙よ
三秒だけ止まれ


君の後ろ姿を、

脳に焼き付けるから





お題 確かに恋だった様より







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