ひらひらと

まるで蝶のように。


そして、

眠るツナを包むように、


桜の花びらが舞っていた。




最初の出逢いは、
薄いピンクに綺麗に色づいた、桜舞い散る木の下で。




















「この道通るのも、もう最後だねぇ」


毎日通った高校への道。

ツナと二人で歩くのは今日──卒業式で最後。


ツナは明日、イタリアに発ってしまうから。



「そうだね…」



清々しい、物悲しい、寂しい


卒業式特有の感情に合わさって離れることが寂しい私たちは、特に言葉を交わすことなく歩いていた。



梅の花が綺麗に挿し、ひらひらと散る様子はあの日を思い出す。

ツナと私が、初めて逢った日。

梅じゃなくて桜だったけど。


「──今思えばあれって失礼だよね」


「ごめんなさい」


「いや、梨奈が悪いんじゃないけど
隼人も悪いし
だからって叩くことないと思うけど」


「だからごめんって」



二人で3年間の思い出を話ながら歩いていたら突然ツナが足を止めた。



「───!」


「ツナ?」



呼んでも反応がなくツナの視線の先を見れば──






あの桜の木が、満開だった。







「わぁ…」



3月1日。
まだまだ寒い冬の日に咲く、綺麗な、それでいて儚い、桜の木。




「…見て、狂い咲き桜だー」


うしろから中学生のような二人組が笑い声をあげながら歩いている。


──普通の人から見れば狂い咲きかもしれないけど…。



チラッと隣のツナを見れば目の前の壮大な光景に口が開いていた。



「ぶっ…」


その顔がマヌケすぎて、吹き出してしまった。



「んっ!?何!?」


「あははははっ…ツナ、顔マヌケ…」


「うるさいなっ」



お腹を抱えて笑い出す私にため息つきながらも付き合ってくれるツナに、やっぱ好きだなぁと再確認。



「ふふっ…」


「落ち着いた?」


「うん…ねぇ、ツナ
私たちが初めて逢ったのって、この桜の木の下だったね」

「うん」




ずっと心にしまっていた、あの日感じたこと。

いつもは恥ずかしいから言えないけど、今日でツナとは逢えなくなるし。


言っちゃえ!




「私、桜の木の下で初めて逢ったときにね、

"このひとのこと好きになりそう"

って思ったんだ」


なんでかな
よくわかんないけど、

そう想ったんだ




「梨奈…」



「だから、
仲良くなってくれてありがと
付き合ってくれてありがと
一緒に頑張ってくれてありがと

ツナと過ごした日々は本当に、本当に本当に、宝物だよ!」



「…」



「ごめんね、こんなありきたりなことしか言えなくて」


「梨奈」


「でも本当に、


「梨奈!」


…何?」


俯いてるツナ。

覗きこもうとすると勢いよく顔を上げて。



「一緒に行こう、梨奈」


「え…?」


「行こう、イタリアに」



まっすぐ真剣な瞳に見つめられる。



「───うん!」







桜咲く


出逢いの日も、別れの日も、

この桜舞い散る木の前で。



(BGM さよならメモリーズ)







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