隣で眠る愛しい人。

高校からずっと一緒だった。
楽しいときも、悲しいときも、嬉しいときも、辛いときも。


だから、
あなたがとてつもなく優しいことなんか、弱いことなんか、知ってるの。

私を愛してくれてることも知ってるの。


───別れを切り出せないでいるのも、知ってるの。
政略結婚の日が近づいてきているのに。

愛し、愛される、優しい日々を終わらせてしまうのは、切なすぎるから。



でも、言い出せないことで綱吉が苦しんでることも、知ってるの。




だから、
私から姿を消してあげる。




静かにベットを抜け出すと、冷たい空気が素肌に刺さる。

それはまるで心に刺さるよう。



だめ、
これ以上綱吉を苦しめちゃ





唇を強く噛んで身支度を整えると、あらかじめ書いていた手紙を綱吉が気づくように置いて。

振り返れば、さっきと変わらない寝顔。





敵が多い人だから、
毎日笑って暮らせるように。

進む道が違っても、
怪我なく健やかであるように。想いを込めて、キスをした。



そのまま、部屋を出ようと思ったのに



「…梨奈」


呟くような、そんな声。
たぶん寝言。


振り返ったら余計辛くなるなら。


流れるだした涙を拭うことなく、部屋を出た。







さよなら、愛してます

幸せに、なってください。









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