ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン



まだ寒い10月の朝。


毛布にくるまっていた私はインターホンの音で起こされた。



こんな朝早くにうるさいなぁ…

せっかくの休みなのに




最初は無視して二度寝しようとしたのにあまりにもしつこいから。



「あー、もう…」



のそりと起きて、毛布をかぶり玄関へ。





開けてみればいい笑顔のツナだった。


「trick or treat!」


そして言われた、今日最初の言葉。

まだ寝起きの頭には難しすぎた。


「とりっくおあとりーと…?
…何こんな朝っぱらから」


ふあー、とあくびをした後のすっきりした頭でもう一度考えてみる。


…とりっくおあとりーと

とりっくおあとりーと

トリックオアトリート

…trick or treat!


「…今日ってハロウィンだっけ」


「うん」


「…忘れてたー」


「梨奈が忘れるって珍しいね
一番張り切ると思ってたのに」


うん、

なんで忘れてたんだろうね

もったいないことしたなー



「…で?」


差し出された手。


「ん?」


「ん?じゃなくて
お菓子、ちょうだい」



お菓子て
あんたそんな年じゃないでしょ



「ないよ、
そんな急に言われても」



その私の答えを待ってたのか、ツナは笑みを強くした。


なんか嫌な予感。



「じゃあ…
いたずらだね」



近づいてくるツナに後ずさりしても、ツナはうちにあがってきて距離は縮まっていくだけ。



「ちょ…、待ってツナ
探すから」


「やだ、待てない」


「やだ、て何かわいく言ってんの!」


「いいから
もう探したらだめ」


「や、ちょ…ひゃっ!」



探そうと身を翻したら腕を掴まれていつの間にか近くに来ていたベッドへ倒された。



「ツ、ツナ…?」


「trick or treat」


「へ?
だから今から探しに…」


「お菓子ならここにあるじゃん」


遮られた言葉。
ニマニマして言うツナの顔。


「はい?
ちょっとツナ、何訳のわからないこと…」



また遮られた

そう思った。


あめを口に入れられたから。



「…イチゴ味」


「そうだね」



そしてツナは私の顔を挟むように手をついて。


顔が近づいて、近づいて。


キス。



そのままむりやり唇を開いて、あめを掬って離れていった。



「お菓子もーらい」



そう言いながらわざと音がなるようにあめを転がすツナ。


あまりに確信犯ぶりに、私もお返し。



「trick or treat」


ツナが反応する前に、キスしてあめを奪い返してやった。










あめのお味は?


イチゴ?

じゃなくて、君の味。


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今日はハロウィン★

お菓子食べましたか!?
いたずらしましたか!?

あたしは
みんなでお菓子パーティーです!


20111031 あぷ







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