授業中 | |
「凜佳〜、あんた最近やけにあの沢田くんと仲良いじゃん」 「えへへ、わかる〜?」 あれから私は沢田くんとよく喋るようになっていた。 「どうしたのよー!?」 クラスメイトだけでなく、他学年の人からも聞かれる。 「教えなーい」 そこへちょうど沢田くんが席へ戻ってきた。 「ね!沢田くん」 「は!?うん?」 訳もわからないまま頷く沢田くんに思わず笑顔が零れる。 「また笑いやがって いつか笑い死んでも知らないからな!」 「ふふふー、楽しいねー」 「どこがだよ!」 ベシっと私の頭を叩く沢田くんは少し笑っていた。 そして、クラスメートたちは羨ましそうに私を見ていた。 私はたくさんの沢田くんを知った。 実は甘いものが好きで苦いもの(グラックコーヒーとか)が嫌いなこと、 髪の毛はワックスとかでしてるんじゃなくて天然なこと、 そして、可愛いこと! 授業中とか下向いて考えてるように見えるけど、ホントは寝てるんだよ! もー、かわいいなぁ 沢田くんは今私のからかいの対象なのです! 「…おい、聞こえてるよ」 不意に沢田くんの声。 「へ?」 「俺はからかいの対象なんだぁ… へー、そうなんだぁ」 「黒い!黒いよ、沢田くん!」 思わず目の前に手をかざして沢田くんの視線から逃げてると、 「おい、お前らー 俺の授業で喋るとは生意気だな」 背後に人の気配が。 『げっ!』 振り返ると、沢田くんよりも黒い笑みを浮かべた怖い数学の先生。 「廊下に立っとれ!」 『はいっ!』 という訳で、私たちは並んで廊下に立っております。 「てか、いつの間に授業始まってたんだろう?」 うーん、と傾げると、 「上田が俺のことからかいの対象、とか言ってる間」 隣からムスッとした声が聞こえてくる。 「…怒ってる?」 「さぁ?」 「怒ってるじゃん! ごめんって」 沢田くんの顔を覗き込もうとすると、 「…おい」 まだ幼い声が近くから聞こえてきて。 「?」 顔を向けるとそこには、黒いスーツを着た赤ん坊がいた。 「リボーン!」 「…沢田くんの弟?」 首を傾げて呟く。 「ちげーぞ、俺はツナの「おいっ、リボーン!!」 沢田くんが慌てて男の子の口を手で塞いだ。 なんか私に隠し事をされてるみたいな気持ちになって。 なんだろう、モヤッとする。 「なぁに? 私に言えないような関係なの?」 無意識に出たのは不機嫌な声。 沢田くんが悪いわけじゃないんだけどな、なんて分かっていながらも直すことはできない。 「そうじゃなくて!…俺の弟、弟だよ!」 …まぁ、普通に考えたら弟だよね 「…そうなんだ」 それから私は弟くんと喋っていた。 リボーンくんだよね? そうだぞ 何歳? 3歳だ わー、まだ小さいのに言葉喋るの上手だねぇ 上田も上手だぞ あはは、ありがとー 他愛のないおしゃべり。 でも沢田くんはじとっとこっちを見ていた。 そして授業の終わりをつげるチャイムが鳴って。 私は教室をのぞき込む。 「あ、授業終わったね沢田くん とりあえずリボーンくんと一緒に教室入ろ? …あれ?」 振り返ると2人はいなかった。 「…どこいったんだろう?」 * * * 「リボーン! なんで学校くんだよ!!」 俺はチャイムが鳴った瞬間、リボーンを掴んで屋上へ走ってきた。 ムスッとリボーンを見る。 「別に理由はねぇぞ ただ……」 「なんだよ」 途中で黙り込むリボーンにイライラする。 本当はこれから何を言われるかわかっているから。 そしてリボーンはおもむろに口を開いた。 「ツナ、おまえ、上田のことが好きだろ」 「だからなに」 でもわざとわからないフリをして声を低くする。 リボーンだって俺がそのことを言ってほしくない、ということを知っている。 それでもリボーン言おうとするのは、俺の為だ。 「諦めろ おまえはボンゴレのボスだ 高校卒業したらすぐ結婚だからな」 「…わかってる」 俺は俯いて呟いた。 でもせめて、 せめて想うだけは (許して) |