料理をしている後ろ姿が好きだったりする。

長い髪の毛が一つに束ねられて動くたびにふわふわ揺れ、そのたびにちらりと見える白いうなじとか、柔らかそうな耳たぶとか。

いつもは髪に隠れて見えないところ。


…ちょとヘンタイくさいなと自分でも思う。


けど、好きだ。







「…わ、ぁ」



無防備な背中にこっそり近寄り、抱きしめてみる。



「どうしたの?翔くん」


「…瑠璃、」


「ん?」


「いや、なんでもない」


「えー?
おなかすいちゃった?」


「まだ大丈夫」


「よかった、あと少しかかるから」



ふわりと微笑んでまた前を向き、包丁を置いた。

まだ切ってる途中だったのに、俺が危なくないように切るのを止めたんだろう。

そんなさりげない気遣いに愛しさが溢れる。


代わりに蓮根を洗い始めた瑠璃。



「今日のごはん何?」


「えっとね、コロッケだよ」


「蓮根は?」


「みじん切りにして、つぶしたじゃかいもに混ぜるの」


「ふーん」



なんかいいな、こういうの。


そう思って首もとに顔をうずめたらほんのり瑠璃の匂い。



「しょ、翔くん
そんなされたら料理が…」


「んー」


「ひゃっ」



さすがに邪魔だったのか、声をかけてくる瑠璃の首筋に吸い付いたら小さな体が大袈裟に揺れた。

ごとんと蓮根がシンクに落ちる。



「も、翔くん!」



ぐるんと腕の中で回り、俺のほうを向いた瑠璃は思いっきり俺の顔をつねった。



「…ふみまへん」


「うん」



うなずくとすぐ笑顔になって抱きついてきた。



「ふふ、」


「何?」


「しあわせだなぁって」



かわいいな、ちくしょう!



「…俺も」













いただきます、ごちそうさま
おはよう、おやすみ

何気ない挨拶を
お前とできる幸せ







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