『では!罰ゼリフは翔くんに言ってもらいましょう!』



どうぞっ、という司会の芸人さんの声で、翔ちゃんの顔がドアップで映る。



『…っ』


『翔がんばれー』
『翔ちゃん真っ赤ですねぇ
リンゴさん見たいです〜』
『来栖、腹を括れ』


『お前らうるせぇよ!』




翔ちゃんの後ろにかろうじて映ってるST☆RISHのみんなが面白がって言うのをばっさり切り捨てるとまた前を向いた。

顔は真っ赤なままだ。



『あ、愛してる…ぜ』



キャーっ、という黄色い歓声を受けながら、言い終わるとすぐに俯いて顔を手で隠す。



『恥ずかしがるなんてまだまだですね』
『ま、おチビちゃんにしては頑張ったほうなんじゃないかい?』


『お前らもうるせえよ!
つーかそう言うならお前らも言えっ』


『主旨がずれてます
これはもともと翔への罰ゲームであって、私たちがしたら罰ゲームになりません
もとはと言えばあなたが…』

『あーはいはい
わかりましたわかりました』

『わー
恐ろしく棒読み』

───プツン



「あっ!」


「何見てんだよ、お前はっ」


「何って…翔ちゃんの」


「言わんでいい!
何の辱めだよっ!?」



ぶるぶると肩を震わせて立っているのは、たった今お風呂からあがってきた翔ちゃんだった。


「リモコン返してよー」


「誰が返すか!」


「けちー」



ちぇ、と近くにあったクッションを抱きしめてソファに座り直すと翔ちゃんも隣に座る。



「つーか本物がいるからいーだろ」


「だって翔ちゃん、なかなか好きって言ってくれないし
ましてや愛してる、なんて…ねぇ?」



翔ちゃんがそういう性格だって分かってるし、無理に言ってほしくはない。

でも聞きだいからテレビで我慢してるのに。



「…じゃあ今から言うから聞いとけよ」


「…え?」


「俺は瑠璃のことか…あ、あい…」



思わぬ展開だけど、翔ちゃんがせっかく言う気になってくれたから正座して翔ちゃんのほうを向いた。



「あい…だああぁっ!
やっぱムリ!」



さっきのテレビとはくらべものにならないくらい真っ赤な顔で膝に突っ伏して頭をおさえた。


「…翔ちゃん」


「…」


「翔ちゃん」



人を期待させといてそこで止めるってひどすぎる!

催促の意味も込めて何回も名前を呼べば、



「…翔ちゃ、」



不意に引き寄せられて。



ちゅ、と小さくひとつ。



「しょ…」



名前を呼ぶまえにまたちゅ、とひとつ。
さっきの触れるだけのとはちがって深くて長い大人のやつ。



「ん…んぅ、……」



頭がくらくらして、
何も考えられなくて、
ただ翔ちゃんにしがみついてた。



「…今は、」



しばらくして翔ちゃんが離れて、あいた隙間に寂しく感じたけど翔ちゃんが口を開いて、大人しく耳を傾ける。



「これで我慢しててくれ」



相変わらずの真っ赤な顔で、それでもまっすぐ見つめてくる空色の瞳。



「…うんっ」
















たとえ、愛してるって言ってくれなくても、

愛されてるって実感できるから、いいんだ








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