「男の子ぉぉぉぉぉぉぉぉぉわぁっ」


「ちよっ、静かにしろっ」



衝撃の事実発覚につい大きな声を上げて叫んでいると、腕を掴まれ引っ張られて、勢いよく扉が閉まる音がした。


引っ張られた勢いのままポスっと何かに突っ込む。


少し赤くなっているであろう鼻を抑えながら見上げると、そこには可愛い唯ちゃんの顔。


なのに…。



「お、おおお、おと、おとこっ」



自分の見たものが信じれなくて、頭がぐるぐる回ってうまく口が回らない。



「あー…
…まぁとりあえず落ち着け?」


ため息をつきながらがしがしと頭をかいた唯ちゃんはぽんぽんと軽くあやすようにあたしの背中を叩いて近くにあった椅子に座らせた。


トクン、と一回だけ鼓動が聞こえた気がしたけど、あまり気にしなかった。

というか、男という事実が衝撃すぎてすぐ忘れた。



ウソだ、
ウソだ、
ウソだ、


「…っウソだぁ」



思わず漏れた言葉はか弱い物だったけど、聞こえたようだ。



「嘘じゃねぇよ
…ほら、どっちがいい?」



差し出されたお茶と水のペットボトル。



「…くれるの?ありがとう
じゃあお茶もらいます」



受け取ると、唯ちゃんは椅子を持ってきて向かい合わせに座った。



「もうどうしようもないから言っちまうけど、俺は男だ」


「…信じれないよ
こんなに可愛いのに」


「可愛い言うな!
つかさっき見ただろーが
…よし、」



何故かムキになって女ということを否定する唯ちゃん。


何がよし、なのか俯いていたあたしには分からず、顔を上げると、同時にバサリと布が落ちる音がした。



「え、」


「ほら、男だろ」


「…っ」



かぁぁ、と顔に熱が集まる。


さっきの音は、唯ちゃんが羽織っていたシャツを脱ぎ捨てた音だった。

つまり唯ちゃんが半裸の姿だったから。



「え、あ、…そ、そんな照れられると俺まで照れるだろっ!」

「だ、だって」


「だってじゃないっ」


「はいっ」



ごめんなさいっ、謝る間に唯ちゃんはウィッグをかぶって衣装とは違う女服を着た。



「お前、事務所は?」


「えっと、シャイニング事務所です」


「あ…まじかよ」


「…?」



わけが分からず首を傾げたけど、答えてはくれなかった。



「…なんでもない
いつか分かることだし」


「じゃあ名前は?」


「…橋本梨唯」


「梨唯、ね
これで名前と事務所は抑えた
もし俺が男だってバラしたら…」


「バラしたら…?」



ごくりと唾を呑み込んで続きを促すと、唯ちゃんは碧い瞳を意地悪そうに細めて笑った。



「お前の仕事はなくなるかもな」



今まで見た、どんな人の笑顔よりも、男っぽかった。





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