「よし、ここなら大丈夫そうだし、しばらくはここに隠れとこうぜ」
そう翔くんが言った場所は衣装部屋の中だった。
「うん」
中に入っていく翔くんについて行きながら周りを見渡すと服でいっぱい。
まぁ衣装部屋だから当たり前なんだけど、ふつうに可愛い服から、いつ着るんだろうと思うような服まで、いろんな種類があって面白い。
あ、いいもの発見!
思わず笑い声が漏れそうなのを頑張って耐えて、それを被った。
「ね、翔くん」
何も知らない翔くんは呼ばれるまま振り返る。
「ん?
ぶっ!ははははっ」
あたしのほうを見るなり吹き出して、しばらくお腹を抱えて笑う翔くん。
「人の顔見て笑うなんてひどいー」
「ちょ、おま、な、何被ってんだよ!」
笑いすぎたせいで目尻に滲んだ涙を指で拭いながら、もう片方の手で被っていたものを取られた。
「あっ、」
「ばかか!」
叫びながら床にそれを投げつける。
するとそれ──社長の変顔のマスクがちょうど上を向いて。
「「ぶっ!」」
今度は二人して吹き出した。
社長の変顔マスク、すごすぎる!
だんだん笑いが落ち着いていっても、翔くんの笑い声でつられて笑って、
翔くんの笑いが落ち着いていっても、あたしの笑い声でつられて笑って。
なんで笑ってたのかわからなくなるくらいずっと笑い続けていたら、笑い声を聞きつけた林檎ちゃんと龍也さんに見つかって、かくれんぼは終わってしまった。
「あなたたち笑いすぎよ」
「廊下中に笑い声が響いてたぞ」
「えっ、そんなにですか!?」
「面白かったもんなー」
林檎ちゃんと龍也さんにあのマスクを見せると、なんとすごいことにお二人とも少し笑った程度だった。
なにやら昔、もっとすごい社長の変顔マスクを被らされたみたいで、それに比べるとまだマシだと言っていた。
どんなのなんだろう、見てみたいような見たくないような…。
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