全ての撮影が終わって帰路につく。
「みんな、いい?
今日見て学んだことをいかして、これからどんどん売れていくのよ!」
今日あたしたちを連れてきてくれた葉月さんがぐっと拳を握りながらあたしたちのほうを振り返ったが、みんな上の空で聞いていなかった。
それも仕方ない、プロの中でもあんな差があることを見てしまったんだから。
…すごかったなぁ。
今でも目を閉じればシャッター音と一緒に思い出せる。
あの雰囲気、
あの存在感。
たった1回、雑誌に載っただけで爆発的に人気が出た唯ちゃんには、それだけのオーラがあったんだ。
あたしも頑張ろっ!
唯ちゃんみたいにカリスマモデルになれるとは思ってないけど、あたしじゃないとダメ、って言ってくれるようなファンを作りたい!
一人で喋る葉月さんの言葉は聞かず、固く決心。
よしっ!と小さくガッツポーズを作って速い鼓動を感じる。
これから始まる期待に胸を膨らませて前を向けば、少しずつ体がうずうずしてくるのがわかった。
…一回、一回だけでいいから、唯ちゃんと話がしてみたい。
あたしをこんな気持ちにしてくれてありがとう、って、伝えたい。
憧れですっ、て、いつか一緒に仕事したいですっ、て、伝えたい。
「…葉月さん、」
「であって、それは……ん?
どうしたの、梨唯?」
喋り続けていた葉月さんを呼んで。
「あたし…ちょっと行ってきます!」
「えぇっ!?
梨唯!?どこいくの?」
葉月さんの静止の声を背中に受けながら、今歩いてきた道を走って引き返す。
会いたい、
唯ちゃんに、会いたい。
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