「梨唯ちゃん、もうちょっと表情やわらかく」


「はい!」


「梨唯ちゃん、無理やり笑わなくていいからリラックス」


「はい!」




やっぱり一人だと上手くいかない

なんでだろう、唯ちゃんパワーとかもらってたりするのかな?



「あ、データいっぱいになったからちょっと待ってて」


「あ、はい
…唯ちゃん」



ちょいちょいと奥でずっと見ていた唯ちゃんを手招きする。



「(どうした?)」



不思議そうに寄ってくる唯ちゃんには何も言わずに、手をきゅっと握った。



「(はっ!?
ちょ、おまっ…)」


「終わったよ、梨唯ちゃん
もう再開して大丈夫?」


「はい
あの…唯ちゃんの手握ったまま撮影してもいいですか?」



あたふたしている唯ちゃんは無視してカメラさんに尋ねた。



「まぁいいけど…ポスターの写真が顔のアップになるかもよ?」


「はい」


「ならいいよ」


「え!?」


「ありがとうございます!」


「え!?
唯の意見は無視ですか!?」


「まぁまぁ、梨唯ちゃんのためだと思って」


「お願い!唯ちゃん!」


「う…わかりました」



ということで唯ちゃんの了承も得て、また撮影が始まった。

唯ちゃんと手を繋いだままだからあまり動けないし、カメラも近いけど、やっぱり何故か体が自然と動く。



「はい、OK
梨唯ちゃんお疲れ様ー」


「ありがとうございました!」



撮影が押してたのが不思議なくらいスムーズに終わった。

やっぱり…。



「…」


「(おいっ、梨唯っ!)」


「…」


「(聞けよっ!)」


「いっ、〜〜〜っ」



手を繋いだまま考え込んでいたら唯ちゃんからデコピンされた。

全然構えてなかったし、普通の人よりも威力がハンパなくて、思わずおでこを押さえてうずくまる。

そのときにぱっと手が離れて、一瞬だけあっ、と思った。
何でそう思ったかはわからないけど。



「(痛いよ!翔くん!)」


「(俺を無視するお前が悪い)」


「(だって考え事してたんだもん!)」


「(なんだよ、考え事って!)」


「そう!そのことだけど、」



ずっと小声で話してたのに、あたしがいきなり普通に話し出したから翔くんが少しびっくりしていた。



「(あたし、翔くんと手繋いでたらなんかいいみたい!)」


「(どういうことだよ!?)」


「(体がね、自然に動くの
たぶん唯ちゃんパワー的なのをもらってるんだよ!)」


「(意味わかんねー…)」


「(とにかくね、唯ちゃんはすごいってこと!)」


「(そーかよ)」


「(うん!
だから、これからもたまに手握るかもしんないからよろしくね!)」


「(はっ!?
……マジかよ…)」





今日はいい発見した!
いつまでも唯ちゃんに頼るのはだめだけど、しばらくは、頼らせてね、翔くん!








|→
top

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -