そしてすぐに今日の予定を説明された。

今日は新シーズンのポスターに使う写真を撮るらしい。
ポスターはあたしだけで写ってるやつと、唯ちゃんだけで写ってるやつ、二人で写ってるやつの3パターン。


まずは一人づつの写真から。

唯ちゃんとは分かれてそれぞれで写真を撮る。

夏に秋服を来て写真をとるなんてことがモデルの世界では当たり前だと知ってはいたけど、改めて辛いことを知った。

ただでさえ暑いのにライトまで浴びてさらに暑い。

こんな状況で笑顔でポーズ、なんて。

唯ちゃん、ほんとにすごいなぁ…
あたしは、まだ笑うことができないままだし…



「梨唯ちゃん、もうちょっと自然な感じで」

「はい!」



「梨唯ちゃん、引きつらないで」

「はい!」



何枚も何枚も撮っているのに、あたしのせいでOKが出ない。

結局唯ちゃんが撮り終わってから30分ほど経ってもOKは出なくて、唯ちゃんを待たせる訳にはいかないからと、先に二人のやつを撮ることになった。



「すみません…」

てきぱきとみんなが撮影を進めていく中で自分が足を引っ張っていることが申し訳なくて、無意識に俯く。



「大丈夫よ、まだ時間はたくさんあるんだし
初めての専属モデルで戸惑いもあるだろうし」



スタッフさんは気を使って優しい言葉をかけてくれるけど、その優しさがいたたまれなかった。

つい手を強く握り締めていた。



「梨唯ちゃん、」


「唯ちゃん…」



そんなあたしの様子を見かねてか、唯ちゃんが近寄ってくる。



「大丈夫」



オーディションのときのように手が繋がれて、力強く目を合わせられる。


俺がついてる
そう、目が言っているようで無意識に緊張していた体がほぐれていくようだった。



「唯ちゃん、梨唯ちゃん、スタンバイお願いしまーす」

「はい」
「はい!」













リズム良く、シャッター音が響く。


ふしぎ、
唯ちゃんとの撮影だと体が自然と動く

まだ笑顔で写ることはできないけど、それでも、楽しい!



「2人ともいいね!
うん、2人での撮影はもういいかな
唯ちゃん、お疲れー
梨唯ちゃんはあと少しねー」


「はい!」



よし!このままいけたら…



意気込んで次の一人での撮影に挑む。
軽くメイクを直してもらって、服も整えてもらって、準備は万全!



「梨唯ちゃん入ってー」


「はい!」



小走りでスタンバイすると、カメラさんの奥にまだ唯ちゃんが居るのが見えた。


あれ、唯ちゃん
もう今日の撮影終わったんじゃ…?



そんなあたしの視線に気づいたのか、唯ちゃんが口をぱくぱくさせる。



お、わ、る、ま、で、ま、と、く…

終わるまで…まとく?



「梨唯ちゃーん、いいー?」



スタンバイしたままカメラではなく違うところを見つめているあたしに声がかかる。



「あ、はい!」


「何をそんなに見てたの?」



カメラさんが振り返り唯ちゃんを見つけた。



「唯ちゃん見学してくの?」


「はい、梨唯ちゃんが終わるの待っとこうかと思って」



あぁ!終わるまでまとくって、待っとくってことか…



「えぇっ!?」


「梨唯ちゃん、頑張らないとね」


「…はい」



わ、なんか唯ちゃんに見られてると思うとまた緊張してきた…









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