着いた…!


一旦足を止めて深呼吸して、扉をノックした。



「入ってマース」


入ってマース?
入っていいのかな?


「失礼します…」

「だーかーらー、受かったっつってんだろ!」

「!」



この声は…!

目が太陽の光を受けてきらきらと輝く金髪を捉えた。
唯ちゃん姿だけど。



「翔くん!」



あ、きれいな空色の目が…



「梨唯!」



一瞬驚いた顔をして、すぐに駆け寄ってきた。



「梨唯っ、シャイニングに言ってやれ!」


「うん!
社長、あたし、オーディション受かりました!」



「ムム、YOUが言うならホントのようデースねー」


「だから、ほんとうなんだよ!」


「どうだかー?」


「あぁ、もう、信じろよ!」


「仕方ありまセンネー、
信じてあげまショウ」


「仕方ないってなんだよ!」


「デワ、Ms.橋本は、無事、シャイニング事務所の一員デース」


「無視すんなー!」


「うるさいデース
Mr.おチビちゃーん」


「来栖翔だー!」


ポンポンとリズムよく繰り広げられる会話についていけないけど、どうやらあたしの合否について争っていたらしい。

と言っても、社長が一方的に翔くんの言うことを信じなかっただけらしいけど。



「オメデトーね」


「…あ、はいっ!」



ぼんやりとそんなことを考えていたら反応に遅れてしまった。



「はぁ…、やっとわかったか」


「トイウコトデー、ワタシはここでサヨナラでーす」



次は反応する間もなく、ピカッと強い光が社長から出たかと思うと、目が慣れた頃にはもう社長はいなかった。



「はぁ!?」


「いない…」



すごい、社長…
何者なんだろう



それより!



「翔くん!ありがとうっ!」


「うおっ!?」



翔くんに向き直って、そのまま抱きついた。



「な、なにがだよっ!?」


「受かったの、翔くんのおかげだよ!」


「はぁ?ちがうだろ」


「ちがくない!
だからありがとー!」



言葉だけじゃ伝わらない気がして、つい抱きつく力が強くなる。



「だーっ!
わ、わかったからとりあえず離れろ!」


「えー」


「えー、じゃないっ」



なにやら翔くんがものすごく必死だからしぶしぶ離れた。



「お前なぁ…」



はぁ、とため息をつく翔くんは少し顔が赤い。

叫びすぎて体があったまったのかな。



「だってね、いつもだったら無理に笑おうとして、逆に顔が固くなってたの
でも翔くんが、笑わなくていいって言ってくれたでしょ?
だから多分、今までで一番自然な表情ができたんだよ!」


「…ばーか、それはそうかもだけど、あのオーディションに来てた人数、お前も見ただろ
あんな大人数の中から一人、お前が選ばれたんだから、お前の実力だよ
梨唯、お前は自分の力で勝ち取ったんだ」



翔くんが柔らかい表情で笑って頭を撫でられた。

撫でるって言うより、わしゃわしゃとかき回す感じかな。



「わわっ」


「これでクビは免れたな!
これからは俺と一緒に仕事だぜ!」


「うん!
これからよろしくね!」



とりあえず一歩、前進だ!









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