どうしよう。
どうしよう。
うだうだと考えながら、メイク直ししようと部屋を出てトイレを探す。
なかなか見つからなくて、迷子にならそうだなぁ、と思っていたら、ふいに何かに腕を掴まれてすごい力で近くにあった部屋に連れ込まれた。
「きゃ…んんっ…」
悲鳴をあげようとしたけどすぐに布で塞がれて。
え、これ、ドラマとかでよく見るようなあれ!?
何で?
誰か…っ。
恐怖が体を支配して体が動かない。
でも、パタンと扉が閉まる音が聞こえると、すぐにその手は離れていった。
「…ふっ、はぁっ、」
瞬間、思いっきり息を吸って肺に空気を送りこむ。
塞がれてた時間は短いものだったけど酸欠ぎみになっていてクラクラする。
それでも危険が去ったわけではない。
ドクドクと嫌な鼓動が頭に響く。
「…わりぃ、大丈夫か?」
後ろから聞こえる、予想に反して労るような、優しい声。
条件反射で肩が跳ね上がったけど、声で誰だかわかってほっとする。
だからといってさっきの恐怖は消えるわけじゃないから、ほっぺたを膨らませて振り向いた。
「…大丈夫か、じゃないよ
翔くんっ!」
「わりぃ、わりぃ」
見えた姿はやっぱり翔くん。
唯ちゃん姿だったけど。
「どうしたの?」
「ん?あぁ、ちょっとお前に話したいことがあって…」
少し言いにくそうに言葉を濁す翔くんはあー、とかうー、とかいっている。
「翔くん…?」
呼びかければ、決心したようにあたしの両肩を掴む。
「あのな、落ちついて聞けよ?」
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