お昼ご飯を食べたあと、いつもとは違う道を辿って来た場所は、



「…」



ツナの部屋のドアの前だった。

どくん、どくん、と心臓の音がうるさい。

ツナが居なくなってから、一度も入ってない。というか、入ろうとすると足が竦んで入れなかった。

最近は部屋の前に来ることだってなくなったのに、なんだか今日は足が自然と向いて。


いけそうな気がしてドアノブを押した。




「……」




全然変わらない部屋。

ツナが使っていた机も、
菜乃佳が持ってきた毛布も、
大好きなツナの匂いも、
何もかもがそのまま残っていた。

ツナが帰ってくるのを待ち受けるように。




まっすぐ前に歩いて、執務机に突き当たると周りをまわってその椅子に座る。


ふかふかの椅子で、予想以上に体が沈んだ目線の先、ひとつ、目に留まったそれは。



「…なつかしい、」



机の端に立ててあった写真たて。
今より少し幼いツナたちと菜乃佳の笑顔がまぶしい。

これは数年前に撮った、みんなが写っている唯一の写真だった。

隠れる恭弥をツナと菜乃佳で捕まえて無理やり撮ったから、恭弥が写真の真ん中でツナと菜乃佳に挟まれてムスッとした顔をしている。


まだイタリアの本部にいた時、ツナはこの写真をずっと持っていて、よくこれを見て微笑んでいたのを思い出す。


…ツナはここに座って、何を思ってたんだろうーーー。



過去のツナに思いを馳せていた菜乃佳は、いつの間にかうとうとし始めて、眠気に誘われるまま意識を手放した。

アジトの近くで何かが起こっているのも知らずに。