「…ん…?」



みんなが寝静まった真夜中、近くで物音がして目が覚めた。


誰だ、とまだよくはっきりしない頭で考えながら起き上がると、それはベッドのそばに佇んで俺を見ている。



ついに出た!?
何がとは言わないが、そう思い、頭が一気に覚めたとき、







「…ツナ」






今にも消えてしまいそうなくらいか細い声がした。

だがそれは、よく慣れ親しんだ声で。





「…莉奈?」



「…っ、ツナァーー」



名前を呼んだ瞬間、バチっと潤んだ瞳と目が合い、抱きつかれた。


















「…で、
昼間に読んでたホラー小説のせいで眠れないって?」


「…うん」


「それ莉奈のせいじゃん」



夜中の、しかもあと2時間ほどで起きなくてはならないという中途半端な時間に起こされて、少しキツくあたってしまった。


すぐにはっとして莉奈を見れば、



「…そうだけど…」



薄い唇を噛み締めて俺の服を握ってきた。




莉奈はいつも、自分の気持ちを押し殺して、我慢する。

強いようでいてほんとは弱い、莉奈のくせ。




服を握る力が強くなって握っている手が白くなっていた。


あ、やばい。




「…っ…ツ、」



ジワジワと溜まっていく雫が零れるまえに手を引いてベットに座らせる。




「ごめん、」




おいで、と腕を広げれば、ふにゃっと顔が崩れてすがりついてきた。



「ツナのばか」


「うん」


「ツナきらい」


「うん」


「…うそ、すき」


「うん」


「…なんかずるい」




涙でぐしゃぐしゃの顔で睨まれても、全然怖くなくて。


莉奈を抱き込み首元に顔をうずめて、緩む顔を隠した。







俺と君と君の涙


あー、幸せだなぁ…。







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