絶体絶命宣言



「じゃあ今から仕事の説明するけど、」


社長さんは机の引き出しを開けてゴソゴソしだした。


「いや、あの、私は仕事がしたいわけじゃなくて、家に帰りたいんですが」

「ん?」


「…ナンデモアリマセン」


怖いよ!
なんでこんな黒いオーラ身につけられるかな
てか顔いいから余計に迫力あって怖いんだ!
あーもう帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰り


「…うるさいんだけど」

「へっ!?」


ふいにしゃべりだした社長さんにびっくりする。

てかあたししゃべってないし!

「だから、うるさいんだけど」

「あたし何も言ってません!」

「さっきからずっと聞こえてるから
俺が怖いとか、俺が怖いとか、俺が怖いとか、」


…そうだったぁ!
ここの人たち顔で人が思ってることがわかるんだったぁ!



「いや、正確に言えば、読心術ね」

「読心術?」

「人が思ってることがわかること」


…プライバシーの侵害だ!

やっぱりこんなとこいられない、どっかから抜け出さ…


「いや、だから
俺心が読めるんだけど」


…今ほど自分のバカさをうらんだことはないよ


「てか第一、ここ、何人も見張りとかいるから逃げ出そうとしても無駄」


「…」


「あきらめた?」


「だってこれ完全に誘拐じゃ…」



まさかほんとにこのまま暮らすなんてことはない…よね



「親だって心配するし…
大学だって無断欠席だし…」



そのとき、バンっと扉が開いて、山本さんが入ってきた。



「ツナ!オッケーなのな」


「ん、ありがとう」



山本さんに続いて獄寺さんも。



「十代目、了承得ました!」


「隼人もありがとう
…ということで、」



社長さんがこっちへ向き直る。

え、なんか嫌な予感…



そして社長さんは言った。
それはもう、素晴らしく真っ黒い笑顔で。



「今両親に許可とったから大丈夫
大学にも長期休暇とるって」



予感的中ー!

あぁもう…
ここで働くしかあたしの生きる道はないのか!?


「そういうことだね」


いや、あの、せめて今だけは読まないで…


「…」


え…、無視?



チラッと社長さんをみたら、至って真面目な顔で、

「読まないでって言ったから」


「あ、そうですね、すみません」

…ちゃっかり読んでるくせに


「はい、聞こえてるからねー」




あー、もう!

もう腹決める!



「あたし、ここで働きます」

ヤケクソで叫んだこの言葉。

そのときの社長さんの顔は一生忘れないと思う。



「…よくできました」


ふんわりと、柔らかい笑顔。

ずっと黒かった社長さんの、真っ白な、笑顔を。



「ようこそ、ボンゴレへ」




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