気紛れシェフのフルコース
ツナはいつも恥ずかしがって。
でも、
ツナがちゃんと想ってくれてるのがわかるから、
不安とかないからいいんだ。
***
何気ない帰り道。
いつも通り並んで、オレンジ色に染まった空を見ながら帰る。
どうでもいいような話をして、
笑い合って、
ときどき黙る。
でもそういうことが、心地いい。
それはわたしが、どうしようもなくツナを好きだから。
だからわたしは、ツナが好きだなぁ、て思ったときに
「好きだよ」
て言うことにしてるんだ。
でも今日は違った。
「好きだよ」
「…え?」
ふいに聞こえたツナの声。
びっくりしすぎて聞き返す。
「だから!
…花梨が好きだよ」
頭一個分高いツナを見上げれば赤い顔。
夕焼けのせいもあると思うけど。
「…ツナ、真っ赤っか」
「うるさい
…好きだよ、愛してる」
「…っ」
愛してる、
なんて。
意識し始めたらなんか恥ずかしくなって顔に熱が集まる。
「…花梨も真っ赤じゃん」
「…うるさいな
ツナがいきなり言うからでしょ」
「…ふーん」
「…どしたの、いきなり」
「別に…なんとなく」
「…ふーん」
二人の影は、温かいオレンジ色に包まれながら、一つになった。
***
ツナはいつも恥ずかしがって。
でも、
ツナがちゃんと想ってくれてるのがわかるから、
…たまにぽつりと言ってくれるのがたまらなく嬉しいから、
いいんだ。