不幸な物語





立ち込める硝煙の鼻をつく香りと、銃撃戦の凄まじい音。



「花梨は、ここにいて」


一緒に隠れていた両親がすく、と立った。



「え、まって!
お父さん、お母さん!」


隠れていた押し入れを開けて出て行く両親に手を伸ばせば、たどり着く前に閉められた。



「開けて!いや!行かないで!」



徐々に近くなる銃撃戦の音と、聞こえなくなっていく両親の足音。



扉にすがりついて泣きじゃくる。





しばらくして、聞こえてきた声に体が震えた。


「う゛っ!」

「あっ、ああぁぁぁぁ!」



間違えるはずのない、声。

苦しそうな、二人分の断末魔。



目の前が真っ暗になった。















「おい、ここ探したか!?」

「あっ、まだだ」

「開けるぞー」



私は放心状態で、会話も耳に入ってくるけど、理解ができなかった。


扉が開いて光が差し込む。

でもその光は、覗き込んできた数名の男の顔によって遮られた。




「もうひとりいたっ!」

「まだ小さいぞ」

「おらっ、取りあえず立て!」



ぐい、と力が入らない腕を掴まれて無理やり立たされる。




「やっ…」



「お、かわいいじゃん」

「あぁ、…どうする?」

「…ヤる?」


男たちが厭らしい手つきで触ってくるのが気持ち悪い。



「いや!やめっ…」



手足をバタつかせ抵抗していると、



「うわっ」

「いっ!」


私を取り囲んでいる男たちが一人の男の人に攻撃され次々と倒れていった。

それはハニーブラウンのふわふわした頭にオレンジ色した炎を灯した人で。



男たちが倒れていくたび、男たちが遮っていた光が見えてくる。


光を体に受けながら、
目の前で繰り広げられる闘いを見ながら、

両親のことを思い出して泣いていた。






「…大丈夫?」



男たちを倒し終えた男の人は、まだ泣いている私の前に座り込んだ。



控えめに差し出される手、

逆行になって見えない顔、


どんな人か、わからなかったけど何故か大丈夫な気がして、その手を取った。













「花梨、」


「花梨!」



「ん…、わあっ!ツナ!?」



目を開ければツナの顔。



「おはよう、花梨
うなされてたけど、大丈夫?」


…夢か
なつかしい



「うん
…昔の夢を見た」


「そっか…
…みんなもう集まってるよ
行こう?」




昔と同じ、控えめに差し出される手。



かわらないな、
そう思いながらまた手をとった。








不幸な物語

必ず幸せはやってくると、
教えてくれたのは貴方でした




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