花鳥
それは、突然のことだった。
でも、彼女の姿が頭に焼き付いて離れない。
「はぁ…」
「おい、聞いてんのか?」
「聞いてるよ、
今日新しい部下がくるんだろ」
「あぁ、
女のことを考えるのはいいが、ちゃんとボスらしくしとけよ」
「わかってる」
まだ微妙に呆けている俺にため息をつきながら出ていくリボーン。
でも実際、本当に頭から離れないのだ。
それは昨日の夜。
敵を追い、薄暗い路地裏に入ったとき。
敵は路地裏に俺を誘い込んで囲んでしまう作戦だったらしく、俺は敵の思う壺でどこを見ても敵、という状況になった。
まぁそれでも倒そうと思えば倒せたと思うけど。
囲まれたことで反応が少し遅れて、俺の後ろにいる奴が襲いかかってきた。
このままでは振り返る前にやられる!というときに颯爽と現れたのが、彼女だったのだ。
「うわっ」
「ぐっ!」
身軽な身のこなしで敵を次々倒していく彼女の戦いは、
花のように美しく、
鳥のように素早く。
なんというか、言葉で言い表せないくらい、綺麗だった。
「はぁ…」
思い出しては、またため息が出る。
あのあと、彼女は敵を倒し終えると何も言わず去っていった。
薄暗くて顔も見えなかったし、探そうにもさがせない。
彼女は誰なんだ
そう、疑問ばかり頭に浮かんでいた。
コンコン
ノックの音がした。
「はい?」
「俺だ」
「リボーン?どうぞ
…珍しいね、リボーンがノックするなんて」
入ってきたリボーンを見てみると、後ろに一人、誰かいる。
「さっき話した部下だ」
「あぁ!」
「よろしくお願いします!」
ペコ、とお辞儀する彼女はどこか昨日の彼女を思い出させて。
「…君?」
「はい」
「…昨日、路地裏にいなかった?」
「え…、
なんで知ってるんですか!?」
目を大きく見開く彼女の雰囲気は、とても、昨日の彼女の雰囲気とは似ても似つかない。
でも、彼女だと思った。
「…昨日はありがとう」
取りあえず、お礼を言っといた。