影人
「ご婚約おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「ボンゴレ夫人なんて、うらやましいかぎりです」
顔に張り付いた笑顔はもう固まってしまった。
愛想笑いを振りまいて、人々が去った後にそっと嘆息をつく。
今日は私とドンボンゴレの婚約パーティー。
きらびやかなドレスがシンプルな、でも高価な、婚約指輪を引き立てている。
でも、どれもこれも嘘。
「大丈夫?
何か顔色悪いけど…」
隣から心配そうに顔を覗き込んでくるボンゴレも、
こんなパーティー、
全部、嘘。
私がドンボンゴレと婚約したのは、ドンボンゴレの好きな方を危険から守るため。
そんなことのために私を利用したドンボンゴレが嫌い。
でもほんとは、
ドンボンゴレは、私が好きなんかじゃない
わかってるのに、それでも期待してしまう私が一番嫌い。
私のほうが好きなのに。
私のほうが近くにいるのに。
どうして私じゃないの。
なんて、
考えても無駄。
私は悩んで悩んで身代わりになることを決めたんだから。
好きな人の幸せは願うもの。
あなたは、
幸せになってください。
影人
いつか笑って、
二人をみれるようになれますように