「俺は認められません!」


鋭い声が部屋に響く。



「…どういう意味?隼人」



沢田さんに聞かれて、うっ、と詰まるが、それでも負けずに私を睨んだ。



「こんな正体がわからない女をここに置くのは危険すぎます!
もし敵ファミリーのスパイとかだったらどうするんですかっ!
ここに来てから一言も喋らないし、自己紹介もしないし」



敵意剥き出しの声、言葉、視線にズキンと胸が痛む。



「隼人!」


「だってそうじゃないですか!
そもそも、10代目はこの女をどこから連れてきたんですか」


「…っ」



沢田さんは優しいから、私が売られていたことを私の許可無しには言いにくいのだろう。

私は、沢田さんを庇うためにも席を立ち獄寺さんの注意を引く。




"私は、恋人から売られました"

そう、持ってきたスケッチブックに書けばみなさん、驚いたり、気まずそうに顔をしたり、それぞれ反応する。



"この目と髪の色、顔のせいで、売られるのは2回目です
喋らなかったのは信じてた恋人から売られたショックから声が出なくなったからです"

…ほんとは、別の大きな理由があるけど


脳裏にしばらく出していない青い炎がちらついた気がした。





そして一番上のページを破って机の上に置くと新しいページにただ一言。



"わかってくれましたか?"



部屋は静まり返っていて、私がスケッチブックを置く音が嫌に大きく響いた。


そのまま私はいたたまれなくなって部屋を飛び出す。




「「美海っ!」」




後ろで沢田さんとクロームの声が聞こえた。











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