「いやっ!どうして…!
今までのあなたは嘘だったの…?」
引っ張られている手。
抵抗してもビクともしない。
すると、ずっと無言だった彼が振り向いた。
「そのとおり全部嘘さ!
お前を買ったときより綺麗にして、儲かるためにずっとお前に優しくしてただけなんだよ!」
「(いやぁ!)」
ばっ、と起き上がる。
目の前に広がるのは、知らない部屋、
…じゃなくて、昨日、私の部屋になった部屋。
…夢
昨日あったことだった…
あの言葉も、彼の本心だよね…
いまだにちくん、と心が痛む。
…信じてたのになぁ
昨日、ここに来てからあまり思い出さなかったのは、沢田さんやクロームが気を紛らわせてくれたから。
優しい…
もう誰も信じない、て思ってたけど、だめかも。
信じてしまいそうになる。
半日しか話してないのに、こう思うなんておかしいかな…
クス、と自然と笑みが零れたとき、扉が控え目にノックされた。
「美海、…起きてる?」
クロームの声。
すぐ後に扉が開いた。
"起きてるよ"
「おはよう、美海
…汗たくさんかいてるけど、大丈夫!?」
"あ、ちょっと嫌な夢見て…"
「…大丈夫?」
言ってる意味が分かったのか、クロームは気まずそうに目を伏せる。
"大丈夫!
あとで汗流すためシャワーあびようかな"
わざと明るい調子で書けばホッとしたようにクロームが息をつく。
「よかった
ボスが、8時30分ごろに迎え来るから準備しといて、だって
服はあのクローゼットから選んでね」
"わかった
ありがとう"
それだけ言うと、クロームは忙しそうに出ていった。
今時計を見れば7時過ぎ。
あと1時間半か…
時間あるようでないかも
…とりあえずシャワー浴びよう
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