信じない
信じない
またどうせ売るつもりなんだから
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オークションが終わり、会場とは違う部屋。
終わってから30分もたってるのに私は水槽に入ったままボンヤリしていた。
「───…み、きみ、君!」
「…っ!?」
何か暖かいものが肩に触れた。
びっくりして大きく後ろに飛び退く。
触れられたところがジンジンと熱い。気づかなかったけどずっと水に浸かったままだったから体がずいぶん冷えたみたい。
バッと何かが伸びてきたほうを見上げると、人の良さそうな顔をした男。
「ごめん、そんな驚くとは…
はじめまして、沢田綱吉です
君は今日から俺たちの屋敷に住むんだよ」
じゃあこの人が、…私の飼い主
"たち"、て何だろう?
「ずっと水の中は寒いでしょ?
出ておいで」
ふちから身を乗り出し、自分が濡れるのも厭わずに、私に手を差し出されて。
少し躊躇ったけど、その手をとった。
信じるな
"これは私を使いやすいようにするためなんだから"
"また売られるんだから"
心の中で繰り返した