「これが本日のメイン、
"人魚"でございます!」


この司会者の言葉で会場の歓声が大きくなる。


「本物の"人魚"ではございません
でも見てください!
碧い瞳、銀に輝く艶やかな髪!
さらにこの端正な顔!
どんな方の隣に並んでも映えるでしょう」


どんどん熱気も上がり、会場の人は飼う気満々。






かわいそうだな、と思った。


彼女がこんな場に入れられてることではなく、
せっかく綺麗に生まれたのに、この場ではそれが"弱さ"にしかならないことが。

苦しそうに泣いているのに、それさえも綺麗に見えることが。

そして、俺だったらあんな辛そうに泣かせたりしないのに、とも思った。







そんな考えてる間に、もうオークションは始まっていて。

始まってだいぶ経ったのか、二人で争っていた。



「4億7000」「5億」
「5億1000」「5億2000」
「5億3000」「5億4000!」


「…………」


十数秒の静寂。




「…それでは、この決着は"5億4000万"で

「10億」

!?」




…思わず言ってしまった。


このまま決まる!
と思ったら、なんか言わずにはいられなかった。


10億、なんて。
それだけ焦ってたのか。






そしてそのまま俺以上の金額をだす人は出なかった。


個室な上、金額の提示も機械でするからわからないはずなのに、彼女と目が合った気がした。



偶然

この世界に、
そんな優しいものはない






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