朝ご飯はフレンチトーストとハム、サラダだった。
みんな食べ終わった後で、俺が隣に座っていた美海に話しかけた。
「美海…、
美海の過去について、聞いてもいい?
言うのが辛いなら、美海の許可を貰ったうえで美海のことを調べることもできるけど…」
結構恐る恐る言ったのだが、
"大丈夫
私、話せるよ"
あっさりと言うものだから、拍子抜けしてしまった。
美海の過去は想像してたよりも酷いものだった。
"青い炎を灯せることがわかった私を両親が気味悪がり、サーカスへ売られたのが5歳のとき"
さらさらと、
"サーカスでは、青い炎が灯せるだけで役に立たない私を、見せ物に仕立てようとして様々な投薬をされたました
投薬を嫌がれば打たれて、投薬は声が出ないくらいの苦痛が伴うときもありました"
ひたすらにさらさらと、書いていく美海。
"髪は銀髪に、目は碧色にされて、
そしてサーカスの舞台に立たせられるようになったのが7歳のころです"
唇をかたく結んで、自分の過去を書いていく美海は、心配になるくらい無表情だった。
"そんな日々のなか、最初は物珍しさでたくさん来ていた客がどんどん減り、私はまた、売られました"
みんな神妙な顔をして、クロームは涙目にまでなっていた。
"やっと投薬から解放される!
どんな人でもいい、はやく違うところに行きたい!
そう思ってたときに私を買ったのが、前の主人、そして、私の恋人でした"
みんなの息を呑む音が聞こえる。
"最初から無条件に好きになったわけではありません
彼と生活していくうちに自然と、です
彼との生活は少なくとも、私にとっては幸せでした
でも、3年たったある日、また私は突然売られました
そして、沢田さんにここに連れてこられました
これが私の今までです"
美海が書き終わりペンを置く。
コトリ、と小さく部屋に響いた。
それでもまだ、怖いくらいに無表情で。
その無表情の下で、どんな顔をしているのか
どんな気持ちなのか
考えると胸がつぶれそうだった。
←