私より一回り大きな手で私の手を握って前を歩く人。
「ねぇ、今日は何するの?」
この人は、サーカスから売られた私を買ってくれた人。
最初は警戒してたけど、3年もたった今では楽しいことを教えてくれる人。
そして私の、恋人。
そんな愛しい人を疑うなんて考えないわけで。
ドキドキワクワクしながらついた場所は、少し森に入ったとこにある屋敷だった。
「…ここ?」
顔を覗き込めばその人は柔らかく微笑んだ。
でもいつもとは何かが違う笑顔だった。
「ついてきて」
反応する前に繋いだ手を引っ張られてつこけそうになる。
「わっ!?」
それでもグイグイ引っ張って行く後ろ姿に初めて不安を覚えた。
何? どうしたの?
この屋敷で何するの?
バンッと開いた扉の向こうの見覚えがある光景を見て目の前が真っ暗になった。
…人身売買
prologue
終わりと始まり