「よっ、と…」
軽々と抱き寄せられ降ろされる。
見た目より逞しくてびっくりした。
「今タオルないんだ
これ羽織ってて」
何も喋らない私の肩に掛けられたのは、沢田…さん?が着ていたスーツの上着だった。
「(ありがとうございます)」
言おうとして口を動かすと、何か違和感。
ん?
首を傾げていると、
「どうしたの?」
沢田さんが顔を覗き込んでくる。
「(何でもないです)」
口を開いても出てくるのは空気のこすれる音だけ。
え、…え?
「(どういう…こと?)」
ふと頭をよぎった考えに気づかないふりして。
でも、
沢田さんの顔を見たら…、。
声が
……出ない
目の前が真っ暗になった。