もうほとんどの人が寝静まる午前2時。



ニャー

可愛らしい声で足元にすり寄ってきた子猫に、口の前に指を立てて静かに、というポーズをする。


意味はわかっていないだろうけど、首を傾げる姿が可愛くて自然と笑みが零れる。



「しー、起きちゃうでしょう
私の今日のターゲットの家の人が」



子猫の前にしゃがむと鼻をつつき、気持ちを入れ替えて立ち上がった。



「よし!行きますかっ」
















今日のターゲットはこの街で一番大きな一軒家。

シンプルな外見だけどよく見ると細かい装飾とかされてて、品のいい家。

若い日本人の男の一人暮らしにしては豪華すぎる家だから、いい物があると思ったんだ。


…私の仕事は泥棒
いい物には鼻がきくんだから





風を通すために少し開けられている窓に手をかけ、中をそろりと覗いて見れば、あまり暗くて見えないけど、シンプルで綺麗な部屋。


うわっどうしよ
高そうなのいっぱいあるんだけど!



気が急いで下も確認せずに中に入ると、一瞬世界が回った。


「…わっ…!?」


そのまま落ちる感覚に目をつぶって。



…。


…。


…あれ?
私、落ちてない?



堅い床に打ちつけられるかと思ってたのに感じるのはフカフカの柔らかい感触だけ。


と、

ふいに男の、寝起きのかすれた声がした。



「…君、誰」



びくっと肩を震わせ、声のするほうへ目を向ける。

そこには、呑気にあくびをしている、男がいた。







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