動き出した二つの組織 その日、綱吉はリボーンと守護者たちを会議室に集めていた。 菜乃佳は綱吉の隣にいる。 「みんな、今から言うことはもう決めたことだから。落ち着いて聞いて」 改まった綱吉の態度にみんな表情が固くなるのがわかった。 「1か月くらいから、リングを狙ってくる奴らが増えてきた。そしてクロームと了平さんは怪我を負い、ランボは生死をさまよった」 みんな、綱吉が何を言おうとしているのかだいたい予想がついたのだろう。 「ボンゴレ、わたしなら大丈夫です!もうあんなヘマは「ランボ」…っ!」 血相を変えて言い募るランボを菜乃佳は制す。 あんなに悩んだツナの決意を、勇気を無駄にしないで。 今のランボに少し反対されただけで決意が揺れる綱吉の、きつく結んだ手に菜乃佳はそっと触れた。 「…っ」 パッと菜乃佳を見た綱吉の目は一瞬弱々しかったが、次の瞬間にはいつもの力強いそれに戻っていた。 深い深呼吸をして息をゆっくり吐き出す。 「俺は…、俺がボンゴレのボスになることで…、裏社会の頂点に立つことで…、少しでも争いが減るならいいと思ってる。でも…」 自分の手のひらを見て、次に空色に輝くボンゴレリングを見た。 「でも…、リングがあることでみんなが怪我するのは……もう見てられない!」 リングから目を離し前を向く。 それは、大空のように澄んだ瞳だった。 「だから俺は、ボンゴレファミリーのボスとして、リングを捨てることにした」 「…もういいんだな?ツナ」 ボルサリーノを深くかぶっていてリボーンの表情は見えない。 「あぁ、決めたんだ」 でも、綱吉がこう答えたとき、ニッと笑ったのはみんなわかった。 「じゃあ俺は何も言わねぇ」 「俺はいつまでも10代目の見方っす!」 「ツナが決めたんならいいさ」 「みんな極限に頑張らなくてはな!」 「…頑張る」 「ボンゴレは1度言い出したら聞かないですからね」 「…草食動物にしてはいいこと言ったね」 みんな綱吉の不安を打ち消すようかのに、にこやかに綱吉に寄っていく。 「……みんな、ありがとう」 綱吉はこっそりと、呟いた。 ← → |