怪しい男 急いで着替えて玄関へ向かう。 俺はついてこなくていいって言ったけど、結局みんなついてきた。 菜乃佳は近くの見つからないところに隠れさせている。 「あっ、来た来た〜。君が綱吉クン?」 さっきの部下が言ったとおり、玄関に男が一人、いた。 思っていたよりも普通で、ニコニコ笑いかけてきたときなんか、一般人のようだった。 ただ1つ、左の目の下に紫のアザがある以外は。 「そうだ 俺に何の用だ」 さっきの部下が言うには、この男は『桜華』と言ったらしい。 『桜華』は菜乃佳の裏社会の呼び名だ。 菜乃佳がボンゴレファミリーなのは、ボンゴレファミリーでも少人数しか知らないはずだし、いつ知られたのかも検討がつかない。 「別にぃ、僕が用あるのは『桜華』の女の子だから」 「ここにその『桜華』はいない」 「そう言うと思った!菜乃佳ちゃん、大事にされてるもんね」 「!?…なんでその名前を!」 ニコニコと当然のように言った男は、どこか不気味で。 「あっ、菜乃佳ちゃんで当たり?その様子じゃこの屋敷のどこかにいるみたいだね」 「…どこでその名前を知った、目的は何だ」 いつもの綱吉からは考えられないくらい低い声で男を睨む。 「怖いなぁ、綱吉クン。そんなんじゃ菜乃佳ちゃんに逃げられちゃうよ?」 「ちゃんと答えろ!」 怒りを抑えずに言ったこの言葉で、男の顔から笑顔が消えた。 「菜乃佳ちゃんを僕のファミリーに入れたい。だから、本人を誘いに来たんだ」 『桜華』は使い方がいろいろありそうだからね 続けて言われた言葉に、みんなキレた。 「…『桜華』を、使う…?」 綱吉はもちろん、今まで黙っていた獄寺たちもこれには口を挟むしかない。 「お前、仲間は使うものじゃねぇぞ!」 「そうなのな」 「俺は、そういうのが一番嫌いだ」 綱吉は今にもグローブをはめて、戦いだしそうで。 「ツナ、ダメッ!!」 見ていれなくて菜乃佳は飛び出してきてしまった。 ← → |