儚く散る桜の花びら





闇夜。


誰もが寝静まり、静寂で包まれているはずのイタリアの路地裏に、複数の足音が響く。




(しつこい!)



黒づくめの男たちから逃げながら少女は思った。


端正な顔を歪ませ後ろを確認すると、顔色一つ変えずに追いかけてくる男たち。


生け捕りにしろ、と命令されているのか、一定距離を保ちながら追いかけてくるだけ。



追いかけられることに慣れている少女でも2時間逃げ続けるのはさすがにキツくなってきた。

と、反対側からも男たちの仲間が出てきた。どうやら挟み撃ちにされてしまったようだ。



「もう逃げられないな」



疲れを見せずにニヤリと笑う男たちは、どことなく不気味で。

男たちの裏に誰が居るのかわからないが、これだけは分かる。このまま捕まったら、一生逃げられない、と。


冷静にここまで考えて、ゾッとした。今まで追いかけられることはあっても、追い詰められることは無かったから。





…仕方ない。ごめんね、約束破るよ、ツナ―――。




少女はどこからか出した扇子を構え、男たちを見据えた。かと思うと、ゆっくり目を閉じた。


少女の扇子から、ほのかに淡い桜色の炎が灯り始めた。




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