約束





白蘭が提示した日時は明日の10時、とあるビルの一室だった。


「ツナ…」


俺と白蘭の話しが終わり、まだみんな頭がついてきていないのか、しんといている部屋に菜乃佳の声が響いた。

声色から言いたいことを読み取って先に言い切る。


「大丈夫だって、菜乃佳
話し合いなんだから」


自分で言った言葉にドキッとした。

本当は、大丈夫じゃないのに。


「でもっ!
白蘭なんて信用できない!」


目いっぱいに涙を溜めて俺にすがってくる菜乃佳。


「行かないで、ツナ
行っちゃやだ!」


みんな、俺の説得は菜乃佳に任せたらしく、何も口を挟んでこなかった。


「行くよ、もう行くって返事したから」


菜乃佳の必死な様子に思わず頷きそうになる。
でも、ここで菜乃佳に負けて計画が崩れたらだめだから。

言葉で突き放した。


「…っ……」


ひゅっと息を呑む音が聞こえ、瞳が揺れる。

あ、落ちる
そう思った瞬間、菜乃佳の頬に一粒、零れた。

それからしばらく、菜乃佳のすすり泣く音だけが部屋に響く。
すると、ずっと黙っていた隼人が見ていれなくなったのか、俺の名前を呼んだ。


「十代目、」


一人が口を開けば、みんな次々と口を開く。


「ツナ、さすがに一人で行くのは賛成出来ないのな」

「あぁ、極限そうだ!」

「ボス、危ない」

「せめて誰か連れて行ったらどうですか、ボンゴレ?」


「…わかった
でも、あっちについたら部屋の外で待っててもらうから」



俺は嫌なやつだ。

ついて来てくれたその誰かが自分を責めることになるのをわかっているのに、頷いてしまった。


ごめん、みんな
こんな俺を心配してくれて



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