ただいちからの手紙





朝、鳥が鳴くのを目を閉じたままぼんやりと聞いていたころ。
メイドのひとりがドアをノックした。



「ボス、お手紙が届いております」


「んー…どうぞ…」



まだ起きてない頭で返事して、体を起こす。



「失礼します
…きゃーっ
し、失礼しましたぁっ!」



こっちを見て悲鳴っぽい声を上げたメイドは顔を染めて、入りかけていた体を引っ込めた。



「?…どうしたの?」


「や、あの、
…衣服の乱れと
その、
……菜乃佳様が…」



ドアから顔だけを出して言うメイドの言葉で昨日、そのまま眠ってしまったことを思い出した。



「あ、そうだった
大丈夫、昨日一緒に本読んでてそのまま寝ちゃっただけだから
そんな顔が赤くなるようなことは何もないよ」



でも、…衣服の乱れ?


そう思い、自分の格好を見下ろしてぎょっとした。



ふつうのシャツを一番上だけ開けた状態で寝たはずなのに、なんかぼたん全部開いてるんですけど!?



「ちょっ…菜乃佳っ!俺が寝てる間に何かした!?」


「…」


ゆさゆさ菜乃佳を揺さぶっても起きる気配はない。


「菜乃佳〜!」



するとメイドが控えめに口を開いた。



「あの…」


「ん?」


「お手紙を…」


「あ、ちよっと待ってね」



取りに行くためベットを降りて立とうとする。

でも、


「…あれ?」


立ったはいいけどふらふらする。



「もー、だめじゃんツナ
この前倒れたんだからそんなにすぐ疲れがとれるわけないでしょ」


「そういうものかな…?
…て菜乃佳!」



後ろから聞こえてきたのは菜乃佳の声で。



「んー?」


「いつから…!?」


「最初から☆」


「おい」



菜乃佳がメイドから受けとった手紙を手渡される。



「はい」


「ありがとう
シナも、ありがとう
仕事に戻っていいよ」


「あ、はいっ!
失礼します」



出ていくメイドを見送って差出人を見れば、"ただいち"と書いてある。


それは、俺と正一との間で決めた合い言葉のようなもの。



素早く取り出して読む。

内容はとても衝撃的なもので、いきなり心臓が速くなった。


そして俺は混乱している頭で、菜乃佳に恭弥さんを呼んでくるよう頼んだ。







←