それはまだ始まり








…ミルフィオーレ、ファミリー?
なんか聞いたことあるような…
ツナならわかるかな?


今、カーテンの間から顔を出すのはさすがに勇気がいるので、車の窓に張り付いて外を見る。

情に任せたまま車のドアを開ける。




「お前っ!…何が目的で」


綱吉の怒っている声。
運転手さんの止める声。


何一つ、菜乃佳の頭には届かなかったのに、



「目的は菜乃佳ちゃんだよ」



この百蘭の言葉だけは、嫌に頭に響いた。





目的は菜乃佳ちゃんだよ


響いて止まないこの言葉は思考を停止させる。




…目的は、菜乃佳?

だったらなんで…?

どうしてみんなを?






「でも直接言っても駄目だったから、今重要視されてるリングを奪って交換してもらおうと思って」




リングと交換…?

じゃあ、みんなが襲われたのは
…菜乃佳の、せい?




ふらっと体が傾いて、踏ん張ろうとしても足だけでは支えられなくて車のドアにつかまる。


カタン、

小さく音が。



本当に小さい音だったのに、百蘭と綱吉は菜乃佳のほうを振り向いた。



「菜乃佳!」



菜乃佳が出てきたことで焦る綱吉と、怪しく笑う百蘭。